ドイツ・オーストリア・スイスのIBM社でCTO(Chief Technology Officer for IBM in Germany, Austria and Switzerland(DACH))を務めるAndrea Martin氏は、embedded world 2018(ドイツ・ニュルンベルクで2月27日~3月1日に開催)の国際会議(Conference)の基調講演者として登壇した。講演タイトルは、Industry Solutions with the Internet of Thingsで、主にIBMの「Watson Internet of Things(Watson IoT)」について語った。

登壇したAndrea Martin氏。日経x TECHが撮影
登壇したAndrea Martin氏。日経x TECHが撮影
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 同氏が見せた最初のスライドには、Watson IoTのグローバル本部がドイツ・ミュンヘンにあることが説明されていた。同本部は1年ほど前の2017年2月に開設された(関連ブログ)。今回のイベント(embedded world)がミュンヘンと同じくドイツにあるニュルンベルクで開催されているため、講演者が気を利かせたて、ドイツつながりでWatson IoTをまず紹介したのかと筆者は思った。メディア(特に日本のメディア)では、「Watson IoTはIBMのAI技術である「Watson」をIoT分野に適用する試み」と紹介されているケースが多く、筆者もそう思い込んでいたことがこの第1印象には影響している。

自己紹介を兼ねて「Watson IoT」を紹介。IBMのスライド
自己紹介を兼ねて「Watson IoT」を紹介。IBMのスライド
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 しかし、そうではないことをMartin氏の講演を聞きながら知ることになった。Watson IoTはWatsonに重きがあるのではなく、IoTの方に意味があるのだ。例えば、最初のスライドには、Watson IoTはドイツ提唱のIoTである「Industry 4.0」の核心だと記されている。だからこそ、ドイツにグローバル本部が設置された。2016年に米国東海岸にしかなかったWatsonの拠点を米国のサンフランシスコに開いた時とは、事情が違う(関連記事1)。

 Watson IoTは、IBMのIoTのプラットフォームやブランドと考えた方が適切だろう。日本で言えば、例えば、日立製作所の「Lumada」と同じだ(関連記事2関連記事3)。Watsonの知名度をIoT事業に使ったのが「Watson IoT」と言える。実際、Martin氏の最初のスライドに載っている3枚の写真のうち2枚は、データをセンシングすることを強調している。そして右下にあるもう1枚の写真は、IoT事業では重要な顧客と議論するための場だとしていた(日立は「協創の場」としている)。

Watson IoTの狙いと概要。IBMのスライド
Watson IoTの狙いと概要。IBMのスライド
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 Martin氏が見せた別のスライドによれば、Watson IoTが目指す先は「Instrumented Planet with IoT」である。地球全体をターゲットにしているのはIBMらしいが、データを集めて解析し、ヒトのためや、ビジネスのために役立てるというのは、他のIT企業のIoTの説明と基本的に同じ。ただし、そのための手段として「機械学習アルゴリズム(AI)」を「新しいソフトウエア」より前に挙げている例はあまりない。