第5世代移動体通信システム(5G)を用いたサービスの前倒し競争が止まらない。2年ほど前まで世界ほとんどの地域でサービス開始は2020年と見られていた。それが、2017年には2019年のサービス開始をうたう通信事業者が増加した。これは2016年半ばに、5Gの無線仕様の一部の規格策定を約半年前倒しすることが決まったことが背景にある。実際、2017年12月、ほぼ予定通りに正式仕様の一部が策定されたことで、移動体通信サービスと技術の展示会「Mobile World Congres 2018」では同仕様に準拠した変調ICが幾つか披露された(関連記事)。
こうした中、2018年内に5Gの移動体通信サービスを始めると発表した通信事業者も複数登場してきた。そのうちの1社が米AT&Tである。

AT&Tは2017年初頭から、標準仕様ベースの5Gサービスを2018年後半にも提供すると発表していた。同社は既に2017年中にオースチン(Austin)を皮切りとして、「5G Evolution」と呼ぶ、LTEの高速通信仕様(3GPP LTE Category 18など)に基づくサービスを開始。現在は同サービスの提供地域を既に23都市以上に拡大している。2018年内には数百都市に拡大する計画だという。その上で、5Gの標準仕様に基づく移動体通信サービス「Mobile 5G」を2018年後半に、米国の12都市で始めるとした。
米国では米ベライゾン(Verizon)も米サクラメント市を皮切りに、2018年の5Gサービス開始を発表している。ただ、これが同社が既に2017年にサービスを提供し始めている固定アクセス(FWA)サービスなのか、移動体通信サービスなのかどうか明確にしていない。
MWC 2018での話題はスイスコム
一方、欧州(スペイン・バルセロナ)で開催されたMWC 2018では5Gサービスの関係者の間で、MWC 2018開催直前に、ある欧州の通信事業者が発表した、5Gベースの移動体通信サービス開始の前倒し計画が話題になっていた。それがスイスのスイスコム(Swisscom)だ。

同社は2018年2月22日、従来の計画を2年前倒しして2018年末に5Gサービスを開始すると発表した(スイスコムの発表資料)。
同社は同年3月半ばに、スイスの首都ベルン郊外のイッティゲン(Ittigen)で5Gの実証実験を開始。その後、各地への5Gシステムの展開を急いで、年内のサービス開始につなげる計画だという。5Gシステムを提供するのは、スウェーデンのエリクソン(Ericsson)である。
スイスコムは4G(LTE)のサービス強化も同時に進める計画。同社は現時点でほとんどの地域で4Gのサービスを提供しており、うち80%の人口カバー率で300Mビット/秒、60%のカバー率で450Mビット/秒のデータ伝送サービスを提供中だとする。同社は2018年末までに1Gビット/秒のサービスを人口カバー率30%の地域で提供するという。
