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 2018年6月27日、デジタルテクノロジーの専門展示会「Cloud Days札幌 2018」(札幌コンベンションセンター)で、北海道大学大学院情報科学研究科の川村秀憲教授が人工知能(AI)の最前線とその応用をテーマに講演した。深層学習(ディープラーニング)の基礎から、AIの実力、成果、AI万能論に対する見解まで内容は多岐にわたった。

人工知能について語る北海道大学大学院情報科学研究科の川村秀憲教授
人工知能について語る北海道大学大学院情報科学研究科の川村秀憲教授
写真:浅野 久男
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 AIは現在、第3次のブームの真っ只中だ。ビッグデータとGPU、ディープラーニングの登場によって、機械学習の性能が飛躍的に向上したと川村教授は説明した。既に人と同じ条件でゲームを戦って勝つAIなども登場しており、特定の領域では人間を超える成果を実現している。米グーグルやPreferred Networks(PFN)といった企業などがディープラーニング用のフレームワークを無償公開しており、開発のハードルが下がっていることもブームに一役買っているという。

 ただ日本を巡る状況には懸念もある。川村教授は現在、AIの分野で世界をリードしているのは米国だという。AIに関する投資額は日本が政府770億円、民間6000億円以上に対し、米国は政府5000億円、民間7兆円以上とどちらも1桁異なるという文部科学省の推計を示した。

 さらに同教授は、今後はAIの実用化で中国の存在がさらに大きくなるとの見方も示した。中国のAIへの投資は政府4500億円、民間6000億円以上で米国ほどの規模ではない。重視するのは、政府主導で教師データの収集が進む可能性だ。川村教授は「病気を診断できるAIなど、中国から良い製品が出てきたら日本は買わざるを得ないのではないか」と話した。

 川村教授は、がん治療や弁護士業務で実現したAIの成果について話した後、北大での取り組みも紹介した。北大では人工知能について理論的な研究を行う一方で、AIの社会実装を意識し企業とも積極的に共同研究を行っている。例えば、ラウンドアバウト式の交差点でスムーズに車を運行するためにAIで車をどう制御すればいいかを、AI制御のラジコン車を使って実証する実験をKDDI総合研究所と組んで行っている。

 また札幌市のIoTイノベーション推進コンソーシアムとは共同で、AIによる俳句の自動生成に取り組んだ。小林一茶や正岡子規、高浜虚子らの俳句を学習用データとして使い、画像に合わせてAIが俳句を作成する。AIは夕暮れにたたずむマンションの写真から「こほろぎや霧の夕日の旅の窓」、食卓にワインが並ぶリビングの写真から「さりし衆よ古籐椅子も新酒哉」といった句を自動生成した。この技術を応用すれば、商品画像や風景画像からキャッチフレーズや紹介文の自動生成も可能になるという。

 ただし川村教授はAI万能論にはくぎを刺した。非常に複雑ではあるが、ディープラーニングは数値の足し算と掛け算を組み合わせたもの。AIに仕事が奪われるかどうかについても、「ある程度AIに置き換わっていくかもしれないが、(AIをどう活用するなどの)メタ思考が必要な仕事には人間が必要だ」と述べ、人間の役割はなくならないと強調した。