デンソーの半導体設計子会社のエヌエスアイテクスは、エレクトロニクス設計の国際イベント「55th Design Automation Conference(DAC 2018)」(米サンフランシスコで6月24日~28日に開催)に登壇し、ADASや自動運転に向けたICについて語った。登壇したのは、エヌエスアイテクス(関連記事1、関連記事2)の杉本英樹氏(取締役兼CTO)である。
同氏が登壇したのは展示会場に設けられたステージの「DAC Pavilion」。元プロセッサーICの設計者で現在はIPコアベンダーの米NetSpeed Systems社(関連記事3)のCEOであるSundari Mitra氏と、杉本氏の対談というスタイルで講演は進んだ。対談のタイトルは「Deign for Safety and Reliability – ADAS and Autonomous Vehicle SoCs」である。
最初にMitra氏が対談を企画した理由を述べた。同氏によれば、AIと共にADASや自動運転は、半導体の今後の成長率が最も高いと期待される応用分野だという。向こう数年間の成長率は10%を超えるとのことだった。そこで、ADASや自動運転向けにはどのような半導体が求められているかを探ろうと、Tier 1のデンソーの半導体設計子会社であるエヌエスアイテクスを招聘したという。
杉本氏によれば、ADASや自動運転時代に入って、車載半導体では3つの新たな方向性が見えてきた。第1はASSPからASICへの移行である。ここ数年間、スマートフォン向けSoCを筆頭に半導体メーカーの関心はASSPだった。しかし、ADASや自動運転の開発は現在進行中で、OEMやTier 1各社間で方式が統一されていない。このため、各社が共通に使うASSPには、機が熟していない。それぞれの企業の要求を反映できるASICが必要だとした。
第2はトップダウン設計が重要になることである。かつて車載ICは個別のECUを制御しており、それほど複雑なICでなかったので、人手での設計最適化は不可能でなかった。ADASや自動運転時代になると、各ECUの制御も複雑になる上、複数のECUが連携動作するなどで、車載ICは大規模・複雑化する。このため、上流からツボを押さえた設計を進めて、下流の設計工程における人手による最適化を大幅に削減する必要がある。