金沢大学の研究チームは振動で発電する小型装置を開発し、「TECHNO-FRONTIER 2019」(幕張メッセ、2019年4月17日~19日)で披露した。全長は15~20mmほどで、直径20mmの1円玉に収まる寸法である(図1)。小型でありながら、1回の振動で0.1m~0.2mWレベルの電力を生み出す。
研究は2014年ごろから取り組んできた。すべてのモノがネットにつながる「IoT」の需要拡大を追い風に、2022年度中(2023年3月まで)の実用化を狙う。通信で情報を飛ばすセンサー部分に適用し、電力の外部供給無しに稼働できるようにする。
既に研究開発の大半は完了しており、製品として同技術を広く普及させるため、実用化に向けたパートナー企業を探している段階だ。
金沢大の振動発電装置は、U字型のばね構造になっている。装置に振動が加わると、ばね構造の表面に積層したFeGa(鉄ガリウム)合金が小さく伸び縮みし、FeGa合金中の磁束密度が変化する。FeGa合金にはコイルが巻いてあるため、磁束密度の変化によってコイルに起電力が発生する仕組みだ。「V-Gen.」方式と呼ぶ。内部抵抗が小さく、エネルギーの変換効率は約40%と高い。
高効率を実現可能にしたカギは、ばね構造の先端に取り付ける重りにある。装置の大きさや加わる振動を分析し、固有振動ごとに共振させる。そうすると、小さな振動でも装置は大きく揺れやすくなる。同研究に関わる金沢大学地域イノベーション・エコシステム形成プログラム特任助教の布川正史氏は「ここに研究ノウハウが詰まっている」と自信を見せた。