「グローバル貿易に必要な手続きの多くが紙ベースのまま。非効率さを減らせば、世界の貿易物量が15%増加するとの試算もある」。2019年5月28日、「テクノロジーNEXT 2019」のブロックチェーンセッションに登壇した、デンマークの海運大手であるA.P.モラー・マースク(A.P. Moller-Maersk)の平田燕奈TradeLensアジアコマーシャルマネージャーはこう指摘し、「ブロックチェーンを活用して、こうした非効率の削減に貢献したい」と語った。

A.P.モラー・マースクの平田燕奈TradeLensアジアコマーシャルマネージャー
A.P.モラー・マースクの平田燕奈TradeLensアジアコマーシャルマネージャー
写真:新関 雅士
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 A.P.モラー・マースクは米IBMと共同で、ブロックチェーンを基にしたグローバルなサプライチェーンのプラットフォーム「TradeLens」を開発し、2018年12月に正式リリースを始めた。荷主やフォワーダー(輸送業務受託業者)、陸運業者、船会社、通関業者、税関・港湾当局など、グローバル貿易に関わるステークホルダーをつなぎ、貿易に必要な文書のやりとりやイベント管理を一元化する。

 従来は紙でのやりとりが多く、時間や手間がかかっていた。「様々な申請手続きにかかるコストが運賃を上回るケースさえある。貨物の状況を確認する際も、船会社に電話したり手入力で検索したりする必要がある」(平田マネージャー)。信頼できる情報を入手しにくい点も問題だった。

 TradeLensはブロックチェーンを活用して、グローバル貿易のサプライチェーンにおける状況をリアルタイムで把握できるという。「空コンテナのピックアップ」「輸入申告許可」など、121種類の貿易関連イベントに対応しており、ブロックチェーン上のプログラム実行環境である「スマートコントラクト」を使って一連のイベントから成るワークフローを効率よく進められる。情報は途中で改ざんできない仕組みなので、信頼性も確保できる。

 現在はTradeLensにより、1日当たり200万件のトランザクションを処理しているという。2019年5月時点で米国や欧州、韓国、シンガポールなど50以上の港湾・ターミナルや船会社3社と接続済みで、横浜とは接続作業中である。「荷主はもちろん、行政機関や金融機関など参加するステークホルダー全てにメリットをもたらす」と平田マネージャーは強調した。