2019年5月28日に行われた「テクノロジーNEXT 2019」の「Techとの新結合で急拡大する快眠イノベーション市場」のセッションには、組織として社員の睡眠改善に取り組む3社の責任者が登壇。それぞれの企業が取り組むことになった背景や具体的なアプローチなどを紹介した。いずれの企業もいわゆる「健康経営」の一環として、社員のパフォーマンス向上のために睡眠改善に取り組んでいる。
導入背景について、フジクラのCHO(最高健康経営責任者)補佐を務める浅野健一郎氏は企業における労働環境の変化を挙げた。「労働人口が多く年齢が若かったこれまでは作業能力の向上に重きを置いていたが、労働人口が減り高齢化が進む今後は健康維持への能力投資に重点を置くべき」(浅野氏)。続けて同氏は、睡眠改善を含む健康経営プログラムの導入と、その後の同社の業績向上が連動していることを紹介した。
組織として生活改善に取り組むとなると、社員の間で温度差が生じがちである。さらには周囲の理解も欠かせない。こうした組織としての取り組みについて体験談を紹介したのがアビームコンサルティング執行役員プリンシパル P&T Digital ビジネスユニット IESセクター長 ウェルビーイング推進担当の堀江啓二氏。堀江氏は、クライアント向けの働き方改革に対する宣言文を紹介、「クライアントに説明することとなり、各プロジェクトのマネージャーや責任者、さらにその上の役員が自分ごととして捉えるようになった」と述べた。
個人的な改善例を紹介したのはNTTデータ 第二公共事業本部 第四公共事業部長の西村忠興氏。西村氏は週末に「寝だめ」をする生活をしていたが、「週末ごとに東南アジアに旅行しているようなもの。同じ時間に起床したほうがいい」との健康指導を受け、同じ時間に起床することにした。それによって西村氏は「20年数年、食欲がわかないので朝食を摂らない生活が続いていたが、1カ月の生活習慣の改善で朝食が食べられるようになった」とその成果を報告した。
全社的に取り組んでいるフジクラやアビームと異なり、NTTデータでは西村氏が所管する、200人規模の部署単位で取り組んでいる。西村氏は、社員のパフォーマンスを向上させるため、睡眠改善のほか、自宅などで仕事が可能な「テレワーク」や本来業務に集中できる「集中部屋」を導入することで「集中力のマネジメント」に取り組んでいるとした。