
世界最大規模のプラスチック・ゴム専門ショー「K2019」(2019年10月16~23日、ドイツ・メッセデュッセルドルフ)で開催される。その事前記者説明イベント「K2019プレビュー」(2019年7月1~3日)では、有力出展社12社が出展予定内容を説明した。サーキュラーエコノミーの実現に向けた4社のプレゼンテーションを紹介した前回に続き、環境負荷低減や自然エネルギー利用を主眼とした企業の出展内容を解説する。
省エネルギー・環境負荷軽減を目指す材料開発
コベストロ(Covestro、ドイツ) CO2からプラスチックを造る
コベストロは、2015年にドイツ・バイエル(Bayer)のマテリアルサイエンス部門が独立する形で設立。ポリウレタンとポリカーボネート(PC)の事業が中心であり、年間売上高は1.8兆円程度で推移している。RWTHアーヘン工科大学と共同でCO2を原材料としたポリマープロセスを開発し、工業規模での繊維製造の商業化を目指す。靴下や医療用繊維への適用を検討している(図1)。
同社はポリウレタン製の風力発電用回転羽根(ブレード)を実用化し、中国で採用された実績を有する(図2)。紫外線や気温変動の過酷な屋外環境において長寿命を保つ軽量なブレードの実用化は、風力発電の効率化に大きく寄与すると考えられる。
さらに、ソーラーカーの研究開発についてRWTHアーヘン工科大学を支援している。オーストラリアで開催される「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ」に参加するソーラーカーのプロジェクトだ。同チャレンジは世界で最もタフなソーラーカーレースといわれる(図3)。
自然エネルギーを効率的に利用する技術開発へ素材メーカーの立場から積極的に取り組んでいる。その姿勢はプラスチック産業が目指すべき方向性を示しているといえる。
高品質で柔軟かつ軽量のポリウレタン製電子パッチの開発にも取り組んでいる(図4)。プリウレタンのフィルムを連続ロールで供給し、そのフィルム上に電子回路を形成する。フレキシブルなため衣類やスポーツ用品などに装着でき、着用時の違和感が小さい。健康管理とデジタル化のニーズを切り開く技術である。
PCについては、5G(第5世代移動通信システム)の普及を控え、透明な電磁波シールド用シートなど、透明性と軽量性を生かした応用開発の新しいニーズが生まれている。バイエル時代からPCを手掛けてきた実績と経験を生かし、先端メーカーとして素材開発に取り組むという。