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AI開発にはお金がかかる

 3人がそれぞれに経営者として医療×AIの開発を進めるなかで、加藤氏は「困難な点や有利な点は何か」を問うた。河野氏は起業してまだ半年ほどだが、困難な点は「薬事承認の大変さ」を、有利な点は現役の医師として「現場のニーズを感じられること」を挙げた。沖山氏は、自社の強みとしてAI開発チームの能力の高さに誇りを持っており、その強みを生かした他社とのコラボレーションや産官学連携にも興味を示していた。

(写真:スプール)
TXP Medical 代表取締役の園生智弘氏
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 園生氏は、学会発表などで救急医学会ではそれなりに顔を知られていることから、「さまざまな病院に入り込みやすい」ことを有利な点として挙げる一方で、自社で手掛けているコンテンツが「地味」であることを、やや自虐的に難点として捉えているそうだ。実際、紹介状の自動作成やカルテの構造化などのツールは「現場に持っていくと非常に喜ばれる」ものの、「投資家などにはあまり響かない」とのこと。そういった認識のズレが地味さに起因していることから、事業のアピールとニーズに合った技術開発の両立が「壁になっている」と苦笑した。

 また、医療現場とそれ以外に壁があるとはいえ、AI開発にお金がかかるというのもまた事実で、ある糖尿病のAI研究では極めてインパクトの大きい論文の資金提供の1行目にGoogleの社名が明示されていたそうだ。園生氏はこの点を強調し、「医師の中には企業との協働を良くないことと考える人も多いが、インパクトの大きい学術研究を実施するには、むしろ企業と協働するべきだ」と話し、学会でも「同様のメッセージを伝えている」と補足した。

 最後に加藤氏は、「医療やヘルスケア領域で、これからAI開発を始める人へのアドバイス」を求めた。園生氏は「マーケットが大きく、事業としても成立し、現場にも歓迎されるような軸を選択できるか。それがポイントになる」と語った。

 河野氏も「現場のニーズをしっかり見ることは重要」としたが、必ずしも「医師である必要はない」と助言して「ぜひとも、現場に入ってほしい」と呼び掛けた。沖山氏は「医師は患者に対してトライ&エラーはできないが、AI開発は日々がトライアンドエラー」と自身の体験も交えてエールを送り、イベントを締めくくった。