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インドで1位だった韓国メーカー

 一方で、地域により戦略を変える必要があることも強調する。中国ではハイエンドモデルとして業務用のセントラル空調を基に家庭用セントラル空調を開発、専門に扱う「プロショップ」を作ることで市場を作り出した。欧州では代理店買収により現地に販社を作ったところ、熱波に見舞われて需要が急増するという幸運にも恵まれた。自社では不足する製品は買収により補う。アジアでの家庭用ローエンド機、米国での大型空調機や日本にない機種を持つメーカーとして、マレーシアOLYインダストリーズや米グッドマン・グローバルを買収した。「当時空調業界での買収は珍しかったが、2400億円、3000億円という思い切った投資で手を打った」(峯野氏)。

 インドでは、当時1位だった韓国メーカーをベンチマークとし、追い抜きを実現した。価格は韓国メーカーより15%高く設定。価格に見合うよう仕様を変更し、電圧変化に強いインバーターを搭載した丈夫な製品を開発して差異化を図った。さらに韓国メーカーはサービスが苦手とみて、サービスを重視すべくトレーニングセンターを開設し、ディーラーを徹底的に教育してエキスパートに育て上げ、顧客に安心感を提供した。また、複雑な現地の習慣に合わせるため、現地採用者を中心とした工場運営や営業活動を行っているとした。

 「堺のダイキンという小さな企業だったから、世界の著名企業と戦うために他社とは違う方法を採ってきた。愚直にエアコンだけ、エアコン専業メーカーだからエアコンで負けたら終わりという危機感でやっていたら、いつの間にかトップになっていた。一番驚いているのは自分たちだ」(峯野氏)。最寄り化戦略の開始から20年がたち、世界の状況は変わってきた。次の戦略が必要になっているという。

 一時は欧州などへの海外進出が目立った韓国総合家電メーカーのエアコン事業だが、現在の海外比率は3割程度で韓国本国が主体になっているという。「韓国メーカーはほぼ駆逐した」(峯野氏)。次に台頭しているのは中国メーカーである。中国メーカーの強みは何といっても価格だ。「1/4の価格の差がある」(峯野氏)。それでも勝算はあるとする。「販路がない中国メーカーがOEMで違うブランドを使えば価格差は2割になる。そしてあの価格は中国一極集中で作っているからできるもの。ローエンド機ならいいがハイエンド機はコストが上がる。世界中で我々はスタディされているが、まだ戦えると考えている」(峯野氏)。

 今後は機器の販売だけでなく、エアコン専業メーカーである特徴を生かして工事やアフターサービスにも力を入れるとする。また、IoTの普及や環境意識の高まりによる規制の強化など、時代の変化をうまく活用することでさらに他社との差異化を進めるとする。

 「企業はビジョンが大切。ダイキンは勝ち抜くためだけに世界に出て、20年で夢が現実になった。アフリカ、中南米、中東は“手付かず”。空調需要は2050年に現在の3倍になるとの予測もある。今後も空調にこだわり、3兆円、4兆円への事業拡大を目指す」(峯野氏)。

新市場に注力
新市場に注力
アフリカ、中南米、中東といった新市場獲得に向け、若手の活躍に期待を見せていた(撮影:新関雅士)
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