デンマークの海運大手A.P.モラー・マースク(A.P. Moller-Maersk)TradeLensアジアコマーシャルマネージャーの平田燕奈氏は2019年10月11日、東京ビッグサイトで開催された「日経 xTECH EXPO 2019」会場で講演した。同社の事業戦略について「遅れている貿易物流業務の電子化を推進し、大きく効率化するとともに、すべてのサプライチェーン参加者が安全・確実に情報を共有できるようにしていく」と説明。その実現に向けたアプローチと進捗、現場での改善例を紹介した。
A.P.モラー・マースクは米IBMと共同で、ブロックチェーン技術を活用したサプライチェーン管理プラットフォーム「TradeLens」を開発、2018年12月から提供している(実際にTradeLensの開発に携わっているのは子会社のMaersk GTD)。「取引量は急増中。現時点で1日200万件程度を処理している」(平田氏)という。
船会社、税関・港湾当局、陸運業者、荷主、フォワーダー、金融機関など、貿易には多数のステークホルダーが存在する。TradeLendsはそれらを電子的手段でつなぎ、貿易に必要な文書のやりとりや、「コンテナ搭載」「コンテナの船積み」「輸入申告」といった貿易イベントを一元的に管理できるようにする。
取引の信頼性を高めるTradeLensの中核機能として挙げたのが書き換え不可、追記だけが可能な「分散台帳」である。「訂正されるたびに、先のブロックを参照して新しいブロックを生成する。書類提出、関連するサプライチェーンイベント、承認ステータスなどを、改ざん不可能な形で共有できる」(平田氏)。
輸出入申告など複数の組織をまたぐ業務プロセスは、あらかじめブロックチェーンに組み込まれている。関係者が取引内容を分散台帳に記録・共有することにより、所定のビジネスロジックを逸脱することなく、プライバシーと信頼性が保たれるという。
平田氏は、「非常に簡単に情報を共有できる。例えばケニアのモンバサからオランダのロッテルダムまで商品を輸出するのに必要な証明書を提出する場合、輸入業者や検疫機関など必要な関係者を画面上で選んで、ファイルをアップロードするだけでよい」と説明した。