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ドイツはポジティブ、日本はネガティブ

 冒頭でも触れた「ドイツと日本で共通する課題」についても語った。

 ドイツと日本は機械やインフラの老朽化による生産性の低下や、高齢化に伴う熟練労働者の減少といった類似の社会問題を抱えている。中小企業におけるAIやロボティクスの導入も共通の課題である。

 「こうした課題に対し、デジタル技術がどう支援できるのかを考えなければならない」(カガーマン氏)。同氏は、そうした社会問題の解決に当たっては、先述のような「マシンと人とのハイブリッドチームが重要な存在となる」と指摘。人と機械の相互作用は、両者の融合だけでなく、働き方に変革をもたらし、効率化するというのが同氏の考えだ。

 一方で、さまざまなケーススタディーの検討に伴い、日本とドイツでの課題の解決方法の違いも浮き彫りになってきた。そして、それこそが重要なポイントだと同氏は語る。

日本とドイツの共通課題と違い
日本とドイツの共通課題と違い
社会的な課題に対する解決策としてデジタル技術はますます重要になっていく。しかし、両国の間には社会的な傾向と問題解決のアプローチに文化的な違いがあり、それが課題の解決策の差となって表れる。(撮影:稲垣宗彦)
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 「なぜここが重要なのか。それは、最終的には一般市民が自分の社会の問題として自ら決定権を持って解決しなければならないからだ」(カガーマン氏)。

 社会との接点という視点では、DX(デジタルトランスフォーメーション)、特にAIに関連して必ず出てくる雇用問題についても触れた。

 インダストリー4.0をはじめとする新たな環境の実現には長所短所があり、ドイツと日本では議論の色合いにも違いが見られるという。ドイツではよりプラス、前向きな議論が先行し、日本の場合はマイナス面、ネガティブな意見が先行しているというのがカガーマン氏の見立てだ。

 ドイツでは熟練の労働者が少なくなっているが、これを補完するのがマシンやデジタル技術とみなされている。足りないスキルを補い、最終的には社会にもプラスの影響があるとみている。自律的なシステムを用いれば勤務シフトも柔軟性が高まる。つまり、機械やAIが仕事を分担した分だけ、労働者は家族やプライベートな時間に費やせるとポジティブに捉えている。一方、日本では自律的システムの導入は、人の置き換え、つまり解雇を意味し、死ぬまで働き続ける必要があると捉えているというのが同氏の見解だ。

日本とドイツのデジタライゼーションに対する捉え方
日本とドイツのデジタライゼーションに対する捉え方
日本では機械の導入はレイオフにつながり、死ぬまで働き続けなければならないと見ていると指摘した。(撮影:稲垣宗彦)
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