全6803文字
PR

 2019年12月18日から21日にかけて東京ビッグサイトで開催された国際ロボット展において、第2日の12月19日にカンファレンス「ロボット革命・産業IoT国際シンポジウム2019」が開かれた。2部構成になっていたこのカンファレンスの第1部「グローバルコミュニティにおける将来ビジョン」の最後には、パネルディスカッションとして、それまでスピーチを行ったマックス・バジェラチャーリヤ氏、ヘニング・カガーマン氏、梅田靖氏、マルクス・ヘス氏とともに、モデレータとして経済産業省製造産業局参事官の中野剛志氏が登壇。中野氏の舵取りで、それぞれの意見を語り合った。

左から順に、マックス・バジェラチャーリヤ氏、ヘニング・カガーマン氏、モデレータの中野剛志氏、梅田靖氏、マルクス・ヘス氏。基本的にバジェラチャーリヤ氏からヘス氏への順で発言した。(写真:稲垣宗彦)
左から順に、マックス・バジェラチャーリヤ氏、ヘニング・カガーマン氏、モデレータの中野剛志氏、梅田靖氏、マルクス・ヘス氏。基本的にバジェラチャーリヤ氏からヘス氏への順で発言した。(写真:稲垣宗彦)
[画像のクリックで拡大表示]

段階的な発展が対応に備える時間を生む

 まず中野氏はこの日に各氏が行ったスピーチについて「ヒューマン・マシン(人と機械)・インタラクションというテーマが共通していた」と軽く総括。「ここからはヒューマン・ヒューマン(人と人)・インタラクションでやらせていただきます」とパネルディスカッションをスタートさせた。

 さらに中野氏は、それまでの各氏のスピーチ中で「パラダイムシフト」や「パラダイム」という言葉が使われていたと指摘し、それを「重要な契機」と表現。続けて、バジェラチャーリヤ氏のスピーチでは氏が「アンプリファイ(amplify)」という言葉を使い、「ロボットは人の代わりになるものではなく、あくまでも“強化する”もの」と強調していたことに「少しほっとした」との感想を述べた。

 「人と機械との関係性」の変化はまだ進行形。パラダイムはシフトし続けている最中の事象であって、研究結果や確定的な説が出ていないというのが、中野氏の意見だ。そこで最初の質問として「人と機械の関係性がどのように変化して、将来的に産業がどのように変化すると捉えているのか」と4人のパネリストに投げかけた。

トヨタリサーチインスティチュート(Toyota Research Institute、TRI)ロボティクス担当副社長のマックス・バジェラチャーリヤ(Max Bajracharya)氏(写真:稲垣宗彦)
トヨタリサーチインスティチュート(Toyota Research Institute、TRI)ロボティクス担当副社長のマックス・バジェラチャーリヤ(Max Bajracharya)氏(写真:稲垣宗彦)
[画像のクリックで拡大表示]

 これに対し、「思ったよりも時間がかかり、一般社会が期待しているほどには進まない」と答えたのがバジェラチャーリヤ氏だ。ロボットが社会を大きく変えたり、人との在り方が大きく変わるためにはいくつかのブレークスルーが必要で、「人間とロボットが真の意味で同僚のように一緒の職場で働く時代はもっと先」だというのが同氏の考えだ。また、バジェラチャーリヤ氏は「転換は時間をかけながら起こる」と予想。その間にこのテーマについて考え続け、我々が社会で望む未来を実現するためにも、その理想形をストーリーとして語り続けることが大事と答えた。

 カガーマン氏は中野氏の問いかけに「最終的な答えが分からないというのは同感」と返答。未来のことを語る際に、感情論に囚われてエビデンスがないのに悲観論を吹聴してしまいがちだが、本当のところ今後どのようになるかは明らかでない。多彩な背景を持つ多くの人たちと研究した経験を持つ同氏でさえ、5年後は予想できても、10年後は分からないという。そして、分からないからこそ、個別のユースケースを考えつつ段階的に取り組み、有益ならば次へ進むというステップが大事と語った。しかし同時に、社会にとって危険であればそれを止める力を持つべきでもあるという。段階的な発展は、さまざまな対応を考える時間が持てるのもメリットであるわけだ。また、感情論に左右されないことの重要性にも触れた。

 梅田氏も「ものづくりに限定して」と断った上ではあるが、機械やAIなどのデジタル技術は決して人とは置き換わらないという考えだ。どんなに自動化が進んだところでその自動化のツール類をいかに使いこなして活用するかという「もう一段メタな部分」は人がやらねばならない課題として存在し続けるとのこと。技術と人と、双方のレベル向上がコラボレーション的に進むのが正しい姿だと思っていると語った。

 このテーマで最後に発言したヘス氏は、未来がどうなるか分からなくとも、それについての議論が大事であると語った。議論が起これば社会の認知が高まり、逆に議論がなければ準備もできないという。また、新たな技術の導入による製造プロセスの進化は今までも起こってきたと指摘。しかし今は破壊的な変化が急激に繰り返されており、そのペースの違いを意識するべきだと語った。