「国際ロボット展」(12月18日〜21日、東京ビッグサイト)において、19日に「ロボット革命・産業IoT国際シンポジウム2019」が開かれた。その第1部「グローバルコミュニティにおける将来ビジョン」から、Toyota Research Institute(TRI) ロボティクス担当副社長のマックス・バジェラチャーリヤ(Max Bajracharya)氏が、「人の能力を支援し高めるロボティクスイノベーション」と題して述べた内容を紹介する。
Toyota Research Institute(TRI)でロボティクスを統括する同社副社長のマックス・バジェラチャーリヤ氏は、TRIが進めるロボティクスの研究・開発のポリシーや実際についてスピーチした。「トヨタグループが考える“ロボット”とは、人にとって代わるのではなく、あくまでも人の活動をサポートする存在だ」とバジェラチャーリヤ氏は言う。
バジェラチャーリヤ氏は「自動車製造」ではなく、「高齢化」という話題から始めた。日本の全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が2050年には38%に達するというデータを提示。65歳以上の高齢者と、これら高齢者を介護できる人の比率は、2050年には1:1になると推測されている。こうした深刻な高齢化は日本だけでなく、中国やアメリカなど、世界中で同様に見られる傾向だという。
このように将来、顕在化するのが明らかな高齢者の介護問題をはじめとして、製造業という枠を超え、日常生活において人々を支援するのがTRIの考えるロボティクスだとバジェラチャーリヤ氏は宣言する。
トヨタが作るのは、人のタスクを支援するロボット
バジェラチャーリヤ氏は「テクノロジー、AI、機械学習、ロボットが労働力を置き換えていくか?」と来場者に問いかけ、「産業の自動化という点では、従来の労働力の置き換えが起こっている。しかし、それほどシンプルな話ではない」と話す。
例えば1990年代にはATMが急増し、人間の窓口担当者がATMへと置き換えられた。ATMはその後も増え続けているが、一方で銀行員数も増えている。預貯金の預け入れや引き出し、振り込みといったシンプルな業務をATMが担い、人的資源をより複雑で利益率の高い業務に集中させられるようになったのだ。
あくまで人間が主体となり、ロボットは人間のタスクを支援する——。これがトヨタの考えるロボティクスなのだ。製造業ではロボットというと「自動化」の道具と考えられている。トヨタは「ニンベンの付く“自働化”」を提唱している。「ニンベンの付く“自働化”」とは、人の手が関わることを前提とした自動化だ。実際、トヨタの生産拠点には、他の製造業と比べると自律的なロボットはあまり置いていないそうだ。