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 「Filmmaker Mode」は、映画やテレビ番組を、コンテンツクリエイターの意図した画質・画調でテレビに表示する仕組みであり、昨年のIFA 2019で発表された。テレビメーカーが、視聴者によかれと思って、または競争のために入れた機能が、映画制作者にとっては、とんでもないものであり、それを是正する。

UHDアライアンスが開催したFilmmaker Modeのプレスカンファレンス
UHDアライアンスが開催したFilmmaker Modeのプレスカンファレンス
2020年1月6日、マンダリンベイホテルにて。(写真:麻倉 怜士)
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 昨年9月のベルリンのIFAで、ドルビー、パナソニック、サムスン、ユニバーサル・スタジオ、ワーナー・ブラザースなどのスタジオ、CEメーカー、技術企業など約40社からなるUHDアライアンスが、「Filmmaker Mode」を開幕直前に発表、今回のCESでは、そのアップデートが発表された。当初からのメンバーのパナソニック、LGエレクトロニクス、VISIOはこのCESで、Filmmaker Mode採用テレビを発表、さらにCEメーカーとしてフィリップス(TPビジョン)、サムスン電子が加わった。

LGエレクトロニクス、パナソニック、フィリップス(TPビジョン)、サムスン電子、VISIOが本モードを採用
LGエレクトロニクス、パナソニック、フィリップス(TPビジョン)、サムスン電子、VISIOが本モードを採用
(写真:麻倉 怜士)
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 Filmmaker Modeの発端は、2014年にある撮影監督(映画のカメラマン)が「テレビの動き補間機能が酷い。私たちの作った作品を台無しにしてしまう」とブログで訴えたことだ。2018年には「テレビで映画を見る時には、テレビの動き補間機能をオフにしよう」とトム・クルーズがツィートした。同氏が言うように、24コマを60コマにフレーム補間した映像は動きの部分でまるで宇宙遊泳しているような不自然な浮遊感になる。監督、撮影監督の制作者からすると、この不自然なフレーム補間(業界では"ソープオペラ(安っぽいドラマ)効果"と揶揄(やゆ)されている)、ノイズリダクションによる「のっぺり効果」、オリジナルのアスペクト比と違うアスペクト比での再生などは、制作意図を壊すものであった。

「テレビの動き補間機能が酷い。私たちの作った作品が台無し」
「テレビの動き補間機能が酷い。私たちの作った作品が台無し」
2014年に撮影監督がブログで訴えた。(写真:麻倉 怜士)
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「テレビで映画を見る時には、テレビの動き補間機能をオフにしよう」と言ったトム・クルーズ
「テレビで映画を見る時には、テレビの動き補間機能をオフにしよう」と言ったトム・クルーズ
(写真:麻倉 怜士)
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 クリストファー・ノーラン監督や、ポール・トーマス・アンダーソン監督、マーティン・スコセッシ監督をはじめとした著名な映画人が、UHDアライアンスに働きかけた。同時併行して監督と撮影監督400人にアンケートしたところ、圧倒的多数の賛成を得たという。「Filmmaker Mode」の名称には、当初は「Director Mode」はどうかとの提案もあったが、撮影監督の存在も大事ということから、もっと幅広い「Filmmaker」に落ち着いた。

マーティン・スコセッシ監督の声明
マーティン・スコセッシ監督の声明
(写真:麻倉 怜士)
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 その内容は、(1)フレーム補間をオフ、(2)ノイズリダクションをオフ、(3)コンテンツのオリジナルのアスペクト比で表示、(4)オーバースキャンをオフ――などである。採用テレビでは、「Filmmaker Mode」が、ダイナミックやスタンダード、シネマなどのイコライジングモードの1つとして扱われる。Filmmaker Modeに設定した後でも、明るさやコントラストといった通常の調整は可能だ。フレームレート・コンバーターやノイズリダクションを効かせたい時は、本モードをオフにすればよい。

 Filmmaker Modeが面白いのは「マイナス機能」ということだ。これまでCEメーカーは、新しい機能、他に無い機能をどんどんつくることで、テレビの競争力を増してきたが、それは余計な御世話だと言われ、せっかくの機能を外すことに同意したのである。メーカー側の機能開発がユーザーのためにならなくなったという意味では、家電の新しいトレンドかもしれない。