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 2020年のCESでも、2019年と同様に、「空飛ぶクルマ」と呼ばれるような電動の垂直離着陸(eVTOL)機の展示に注目が集まった。大手自動車メーカーである韓国・現代自動車と、ヘリコプター大手の米Bell Textron(以下、ベル)がそれぞれ、エアタクシーや空のライドシェアなど、都市部での「空のライドシェア」や「エアタクシー」といった「UAM(Urban Air Mobility:都市型航空交通システム)」に向けたeVTOL機の新型機を披露した。いずれも多くの来場者の関心をさらい、大勢が各社のブースに訪れていた。

ベルの「Bell Nexus 4EX」
ベルの「Bell Nexus 4EX」
(撮影:日経 xTECH)
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現代自動車の「S-A1」
現代自動車の「S-A1」
(撮影:日経 xTECH)
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 eVTOL機は、従来のヘリコプターに比べて、電動化によって燃費の改善やメンテナンスコストの削減といった大幅なランニングコストの削減につながることや、駆動部が静かなこと、複数ローターの利用などで安全性の向上につながることから、空のモビリティーに「破壊的イノベーション」を起こす可能性を秘めるとして、モビリティー業界や航空業界などから注目を集めている。ヘリコプターメーカーにとって、eVTOL機は、既存市場を奪う強力なライバルになり得る。こうした状況で、eVTOL機に対抗するのではなく、積極的に取り込もうとeVTOL機の開発に乗り出しているのがベルである。同社は軍事用から民間用まで、幅広いヘリコプターを手掛ける実績を基に、UAM用eVTOL機の中で大型の部類に入る機体を開発中だ。

 一方で、自動車業界もeVTOL機に関心を寄せる。ハイブリッド車や電気自動車といった電動車両で培ったモーターやインバーター、バッテリー制御技術といったパワーエレクトロニクス技術を、航空機の電動化に生かせるからである。加えて、eVTOL機の量産に自動車の量産ノウハウを生かせると目されている。

 例えば日本では、デンソーは航空機の装備品大手の米ハネウェル(Honeywell International)と提携し、eVTOL機向けのモーターやインバーターの開発に乗り出すと2019年6月に発表した(関連記事)。HondaJet(ホンダジェット)を生んだホンダも、航空機の電動化に力を入れ始めている(関連記事)。

 すなわち、eVTOL機を舞台に、航空業界と自動車業界がつばぜり合いを演じている。今回の現代自動車とベルの出展は、その縮図と言える。