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 驚いた。VRのヘッドマウント・ディスプレーというと大きく、重たく、画質は悪く、音も悪く、とても長時間掛けていられない、見ていられないというイメージが強い。世の中はVR時代到来といわれながら、家庭に普及しないのは、こんな不都合が多いことが原因だ。ところがパナソニック アプライアンス社が開発したVRグラス(試作機)は、良いではないか。実に快適だ。これならVRコンテンツを積極的に見てみようという気にさせられる。

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筆者が着けてみたところ
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筆者が着けてみたところ
(写真:麻倉 怜士)

 まず軽い。現状150グラム前後。ヘッドマウント・ディスプレーは頭全体をしっかりバンドで締め付けなくてはならないが、このVRグラスは普通の眼鏡と同じく、耳に掛けるだけ。少し前が重いが、商品化に向けては、120グラムを目標にするという。しつらえもとてもよい。これまでのような、目をすっぽり覆うものではなく、これは眼鏡型。まるでジャン・レノもしくはジョン・レノンが着けるサングラスみたいな、かっこよさ。

 画質が素晴らしく良い。これまでのVRは、映っているものがボケボケなのに、ヘンに実体感や臨場感があるから、その矛盾で頭がくらくらする。しかるにこのVRグラスは、非常に画質が良いのである。見たコンテンツは景色モノだが、11Kの360度映像から、ほぼ正方のアスペクトを切り出して、約2K映像が見えた。コントラストがしっかりとし、クオリティー的なリアリティーも高い。こんなナチュラルで、真に迫ったVR画像体験は初めてだ。しかも音が良い。イヤホンだが、癖が少なく品位感が高い。

 こんなにハイクオリティーな映像なら、長い時間、見続けていても快適に違いない。なぜ、これほど突拍子もない優れたVRグラスが開発されたのか。パナソニックで、本VRグラスを開発したのが、DVDやBDの開発に携わった小塚雅之氏(パナソニック アプライアンス社 技術本部 デジタルトランスフォーメーション戦略室室長)、柏木吉一郎氏(メディアアライアンス室・次世代AVアライアンス担当部長)。つまり、画質、音質を極めるのを日常とするクオリティー屋たちだ。彼らが、現状のヘッドマウント・ディスプレー程度で、満足するわけがない。

パナソニックのVR開発への思い
パナソニックのVR開発への思い
(写真:麻倉 怜士)
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 そこで「リアルとバーチャルの区別が曖昧なレベルの臨場感実現」を大きな目標とし、画質、音質の獲得要件を掲げた。

(1)画素構造が見えない解像度(画素/度が重要)→スクリーンドア効果(画素構造が見えてしまう)を撲滅するため
(2)画像が本物に見える十分なダイナミックレンジ→HDRを導入する
(3)没入感を支援する高音質→VR向きの高音質を開発

 これらの要件をどのように実現したか。映像デバイスはカナダKopinの1インチ型マイクロOLEDパネル。シリコンの上に直接有機ELを蒸着したデバイス。ハイスピード動作が可能で、スクリーンドア効果も極小に抑えられる。映像処理は、VRで初めてHDR(HDR10、HLG)を採用。このへんは、パナソニックの得意技だ。目とマイクロOLEDの距離が近いので、2枚のレンズの間で光を往復させ、焦点距離を稼ぐ技術はLUMIX譲りだろう。

 イヤホンは、テクニクスブランドのハイエンドイヤホン「EAH-TZ700」で開発された磁性流体(ボイスコイルの動作を円滑にする)ダイナミックドライバーを採用した。磁力を帯びたオイル状の液体を、ボイスコイル(コーン紙を振動させる部品)とマグネット間に充填。その結果、入力信号に対してコーン紙を正確に動かせ、しっかりとしたピストン運動が得られ、歪みを大幅に低減できる。

 今回の試作機のマイクロOLEDは1インチ型で4K相当の解像度だが、商品化に向けては1.3型/2560×2560ドット(5K相当、画素密度2245ppi)を搭載予定だ。これは10ビット/HDR/120Hz表示に対応する。パナソニックでは、5Gを契機にVRは本格普及期に入ると見る。5Gは「超高速」と「超低遅延」により、VRコンテンツの配信には最適とする。本番製品の登場が楽しみだ。

手作りのシステムを披露
手作りのシステムを披露
パナソニックのブースにて。(写真:麻倉 怜士)
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様々な角度から見たところ
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様々な角度から見たところ
(写真:麻倉 怜士)