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 カメラやミリ波レーダーと並んで、自動運転車向けの周辺監視用センサーの「三種の神器」と呼ばれる3次元LIDAR(レーザーレーダー)。自動車メーカーが車両への搭載向けて検討を進めていることを受けて、既存の部品メーカーだけでなく多くのスタートアップがLIDARの開発に乗り出しているが、ここへきて雲行きが怪しくなってきた。前後編の2回に分けて動向を解説する。

 「そろそろ“退場”するスタートアップが増えてくる」――。LIDARを開発するスタートアップの幹部の予言だ。

 LIDAR専業のスタートアップの数は70社とも100社ともいわれ、「CES 2020」の展示会場には多くの試作品が並んだ。車載センサー事業の拡大を目指して、ソニーが同市場に参入すると宣言したことも大きな話題になった(図1)。実用化の時期は明言していないが、車載カメラのCMOSイメージセンサーに使う技術を活用した、高感度な受光素子を武器に勝負を仕掛けるようだ。

図1 ソニーが開発した試作車「VISION-S(ビジョン エス)」
図1 ソニーが開発した試作車「VISION-S(ビジョン エス)」
「CES 2020」で披露し、LIDARを開発中であることを明かした。(撮影:日経Automotive)
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 一見すると活況に思えるが、各社に話を聞くと必ずしも明るい未来を描けているわけではなかった。昨年と比べて市場や自社の成長性に不安を抱く声が大きくなり、増え続けていたLIDARのスタートアップの数は「ピークを過ぎた」(別のLIDARメーカーの幹部)との意見が目立った。

 ドイツの部品メーカーのセンサー担当者は「LIDAR市場の現状は、ミリ波レーダーが出始めたころの動きと重なる」と分析した。当時、ミリ波レーダーを手掛けるスタートアップが多く登場した。結局は数社に集約された経緯と同様に、LIDARメーカーも減少に転じるという見立てである。

「使い物にならない」LIDARが散見

 多くの関係者が「淘汰」を予測するようになった理由は大きく2つありそうだ。まず、数年前の想定に比べて自動運転市場の立ち上がりが遅れていること。LIDARの搭載が必要とされる「レベル3」以上の自動運転車の実用化に、自動車メーカーやサービス事業者が手間取っている(図2)。

図2 米GM傘下のクルーズ(Cruise)はサービス開始を延期
図2 米GM傘下のクルーズ(Cruise)はサービス開始を延期
当初は2019年内に無人運転タクシーを開始する予定だった。写真は2020年1月に公開した最新の試作車「Cruise Origin」(出所:Cruise)
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 もう1つの理由は、スタートアップの開発方針にある。多くの企業がコストの低減を優先して「メカレス型」のLIDARを手掛ける。メカレス型は、近赤外レーザー光を走査するためのスキャン機構を可動部のない素子かMEMS(微小電子機械システム)で置き換えたもの。回転機能のある「メカ型」に比べてコストを抑えられるが、高い検知能力を確保するのが難しい。

 ある自動車メーカーの自動運転技術者によると、「様々なスタートアップのLIDARを試したが、コストを優先するあまり性能面で使い物にならないものが多かった」という。具体的には、LIDARの解像度が不十分だったりレーザー光を走査できる範囲が狭かったりし、自動運転車に必要な物体認識能力を備えていないLIDARが散見されるようだ。

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