インドの乗用車市場で5割のシェアを持つマルチ・スズキ(Maruti Suzuki India)は、現地の部品メーカーの成長を長年けん引してきた。ステアリング大手ジェイテクトのインド子会社であるジェイテクト・インディア(JTEKT India)も、マルチ・スズキとともに成長してきた代表的な企業である。
同社は、インドのソナ・ステアリング(Sona Steering)と光洋精工(現ジェイテクト)の合弁であるソナ・コーヨー・ステアリング・システムズ(Sona Koyo Steering Systems)が前身である。ソナ・コーヨー・ステアリング・システムズは2017年にジェイテクトの子会社となり、2018年に社名をジェイテクト・インディアに変えた。古くからマルチ・スズキ向けにステアリング部品などを供給してきた。
同社はコラム式電動パワーステアリング(C-EPS)やマニュアル・ステアリング・ギアで強みを持つ。C-EPSはマルチ・スズキをはじめ、ホンダやトヨタ自動車など日系メーカー向けで高いシェアを持つ。マルチ・スズキ向けのC-EPSは約半分をジェイテクト・インディアが供給する注)。
一方、インドの乗用車市場で第2位の韓国・現代自動車(Hyundai Motor)や、同4位のインド・タタ・モーターズ(Tata Motors)への採用はこれからだ。現代自動車向けのC-EPSは韓国・万都(Mando)が主に供給する。韓国やインドの自動車メーカーは低価格化への圧力が強く、日系の部品メーカーは苦戦しているようだ。
現在はマルチ・スズキがインド市場で圧倒的な強さを持つが、最近ではSUV(多目的スポーツ車)を中心に韓国・中国メーカーの動きが活発化している(関連記事)。ジェイテクト・インディアにとって、マルチ・スズキ以外をどう攻略するかは今後の大きな課題といえそうだ。