全1194文字

 「トップダウンのアプローチで進めていこうとしていたが、それに併せてボトムアップで働き方改革を進めていった」。2020年2月19日、都内で18日から開催中の「東京デジタルイノベーション2020」(主催:日経BP)の基調講演で日清食品ホールディングス(HD)の喜多羅滋夫執行役員CIO(最高情報責任者)は同社が進めている働き方改革についてこう述べた。

 トップダウンとは制度改革、ボトムアップとは草の根の改善活動を指す。喜多羅CIOは前者をA面、後者をB面の活動と位置づける。「年間労働時間を半月分削減 『B面プロジェクト』で達成した働き方改革のコツ」と題した講演で、現場発の具体的な取り組みを語った。

日清食品ホールディングスの喜多羅滋夫執行役員CIO
日清食品ホールディングスの喜多羅滋夫執行役員CIO
(撮影:星 佳代子)
[画像のクリックで拡大表示]

 日清食品HDは2016年度の年間総労働時間(社員1人当たり)が2100時間を超えており、食品業界の中で「2番目」(喜多羅CIO)に長かったという。「同業は総労働時間が2000時間、1900時間を実現している中、これでは将来を担う人材が入社してくれない」(同)。危機感を持った同社は、生産性向上とワークライフバランスの改善によって2019年度までに年間総労働時間を2000時間以下に減らす目標を掲げた。

 トップダウンでスーパーフレックス制やフリーアドレス制、テレワーク制などを導入した。こうした施策を成果につなげたのがボトムアップの取り組みだ。例えばIT部門からはITサービスデスクの業務の一部を人手をかけずにできないか、というアイデアが出てきた。そこからAI(人工知能)を使ったチャットボット「AIひよこちゃん」の導入につなげた。例えば「印刷できない」といった問い合わせはチャットボットがテキストで返せるようにして現場の業務効率改善につなげた。

 草の根の活動をトップダウンの施策と組み合わせた結果、年間総労働時間を大幅に減らせた。2017年度は2100時間を割り、2069時間に減少。2018年度は前年比マイナス84時間の1985時間と早々に目標としていた2000時間以下を達成した。1日の就業時間7時間40分に換算すると年間で約11日分になる。2019年度はさらに減る見込みだという。社員の意識調査によると、2017年度は働きやすさに満足しているという回答は48%だったが、2018年度は8ポイント上がり、56%と約6割が満足しているとの結果になった。

 喜多羅CIOは現場発の「B面プロジェクト」によって問題意識や目標数値を全社で共有できたと説明。ともすれば高い目標設定に対して先が見えず、「ほんまにできるのか」(喜多羅CIO)となってしまいがちな働き方改革だが、「小さな一歩を踏み出しながら、みんなが乗っかっていけるようなアプローチをとればいつかは目標を達成できる」と呼びかけ、講演を締めくくった。