全5198文字
PR

 「データサイエンティストを名乗る人は、グラフにすぐ近似曲線を入れたがるが、(やみくもに入れても)現象は理解できない。ものづくりの現場に即したデータリテラシー(データを扱う能力)を十分に備えている人が少ない」。デンソー 生産技術部担当次長で技師の吉野睦氏(工学博士)は「東京デジタルイノベーション 2020」(2020年2月18・19日、ザ・プリンスタワー東京)最終日に「ものづくりのためのデータリテラシー」について講演した(図1)。

図1 登壇したデンソー生産技術部担当次長で技師の吉野睦氏
図1 登壇したデンソー生産技術部担当次長で技師の吉野睦氏
(写真:星 佳代子)
[画像のクリックで拡大表示]

 製造業においてはIoT(Internet of Things)の普及に伴い、製品にまつわるデータはID(識別番号)が付いた個のデータへと変化している。ちょうど、流通業の現場でPOSデータが「ID POS」といわれるデータに変化したのと同じ。デンソーにおいては、例えば工場で生産している部品はネジの1本1本まで管理する、個別にQRコードを付加せずとも、自動で個別認識できる技術が使えるようになっている。

 1つのID、つまり部品個々にぶら下がる、加工条件、温度、電流といった細かいデータをうまく分析して生かすのは、技術者たちの仕事となる。デンソー社内では、技術者たちのデータサイエンスのリテラシーを鍛え上げる社内教育の最中という。従来のSQC(統計的品質管理)とは異なり、ものづくりにかかわる技術者の業務に特化した内容になっている。

 その教育の旗振りをするのが登壇者の吉野氏。同氏は、社内の文系と理系、どちらのバックグラウンドの人材も業務でビッグデータを扱えるようにと、「文理横断型」の演習式教育を推進している。

 「データを活用する際に必要となるのは、データ分析のスキルだけではない。データを理解して、データを準備すること。言い換えると『特徴量をどう設計するか』のスキルが必要」(吉野氏)。特徴量とは、コンピューターが機械学習をするための材料として入力する変数である。その決定はAI(人工知能)が苦手としており人が決めるしかない。「データサイエンスの世界はガベージ・イン・ガベージ・アウト(ゴミを食わせれば、ゴミを吐く)。きちんと理にかなった入力値の用意が重要だ」(吉野氏)。

 今回の講演では、ものづくり現場でのデータサイエンス活用における必携知識について解説した。正規分布について勘違いしているような初心者から、データサイエンスの知識を実務で駆使する上級者までステップに分けて、ものづくりにかかわる技術者がデータサイエンス活用で押さえるべき知識について説明した。