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 ルネサス エレクトロニクスと日立製作所は、車載SoC/ICに集積するA-D変換器に向けた、新たなデジタル補正技術を開発した(ニュースリリース)。同技術を適用したA-D変換器を試作したところ、-20~+125℃の広い温度範囲でSNDR(Signal-to-Noise and Distortion Ratio)が±1dB以下に収まり、高い安定性があることを確認した。両社は今回の技術の詳細をISSCC 2020で発表した(講演番号9.7)。

 開発した技術を適用したA-D変換器は、ADASや自動運転向けのSoCやICへの集積を狙う。ADASや自動運転では多数のセンサー(レーダー、LiDAR、超音波センサーなど)が必要で、それらの出力を受けるためのA-D変換器が欠かせない。このようなA-D変換器に今回の技術を適用することで、広い温度範囲で高精度な処理を行えるようになるという。

今回開発の技術を適用したA-D変換器の試作チップ
今回開発の技術を適用したA-D変換器の試作チップ
ルネサスのスライド
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 今回対象としたA-D変換器は、マルチステージのΔΣ変調器を使うタイプである。マルチステージΔΣ変調器は過大入力があっても安定して動作する特徴を持つものの、アナログ積分器の特性(アンプの速度や利得)の温度変動が、出力精度を劣化させることが課題だった。そこで今回、ルネサスと日立は、この課題解決を狙って、2つの新技術を開発した。(1)アナログ積分器の温度変動による影響をデジタル補正する技術、(2)このデジタル補正技術を低消費電力な回路として実現する技術、である。

マルチステージのΔΣ変調器の課題
マルチステージのΔΣ変調器の課題
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 (1)の「デジタル補正技術」の概要は以下の通り。マルチステージΔΣ変調器では、積分器(図中ではH1A(s))の温度変動により、量子化誤差(Q1)が変動する。そこで、量子化誤差(Q1)の変動を見極めるために、1ビットの疑似乱数(XPRN)を発生させて、積分器出力に重畳し、量子化器に入力する。量子化器の出力(NTF1A(Q1+XPRN)と、疑似乱数(XPRN)とを「LMS(最小二乗平均)エンジン」で比較して、量子化誤差(Q1)の変動を見極める。そして、見極めた変動分を踏まえて、出力段のFIRフィルターの係数を補正する(STF2D→DCNF1、NTF1D→DCNF2)。補正は常時行われるため、ロバストかつ高精度なA-D変換を可能にするという。

開発したデジタル補正技術の概要
開発したデジタル補正技術の概要
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