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 「ISSCC 2020(International Solid-State Circuits Conference 2020)」(2⽉16〜20⽇に⽶国サンフランシスコで開催)では、アナログ-デジタル変換器(以下、A-D変換器)に関する15件の発表が2セッションに分かれて行われた。A-D変換器は多くの電気製品の要となるため、例年人気が非常に高く、今年も大会場に立ち見が出る盛況ぶりだった。競争の激しい分野にあって、日本勢からの発表も行われた。

 A-D変換器の最近の技術トレンドは、次世代通信などの超高速変換に必須の方式として、パイプライン方式がリバイバルしていることである。今年のISSCCでは、同方式の発表が5件あった。従来のトレンドであった超低電力変換に適した逐次比較方式は、わずか1件にとどまった。また、ノイズシェーピング逐次比較方式やデルタシグマ方式は、昨年同様に勢いがあり、ともに4件ずつ発表された。これらは、高速性と高分解能を両立できるため、産業分野での実用的価値が高く、今後も活発な開発が続くと予想される。

ISSCC 2020で発表されたA-D変換器の変換方式の内訳
ISSCC 2020で発表されたA-D変換器の変換方式の内訳
筆者が作図

 A-D変換性能は、毎年更新されており、ISSCC 2020では、変換速度18Gサンプル/秒、分解能12ビットの超高性能変換が発表されるに至った。なお、A-D変換の所要エネルギーは、15年間で1/1000にまで低減しており、この分野の技術革新は驚くべきものがある。

A-D変換性能の過去15年間の推移
A-D変換性能の過去15年間の推移
筆者が作図

 今年のISSCCで目を引いたのは、「デジタル補正回路」を内蔵したA-D変換器の発表が5件もあったことだ。高性能のA-D変換を行う上で、A-D変換器に含まれるアナログ回路部の特性変化を、デジタル回路による信号処理で補償する技術が注目されているものの、これまでは、デジタル補正回路を同一チップ内に搭載したA-D変換器は、それほど多く発表されていなかった。特に今回、米Analog Devicesの発表(講演番号16.1)や、ルネサス エレクトロニクスと日立製作所による発表(講演番号 9.7)は、本格的なデジタル補正回路を搭載している。A-D変換器の開発が、従来の性能指標競争から実用価値本位にシフトしつつあり、その流れを企業が牽引していることを示唆している。

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