全2359文字
PR

 ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)では技術分野ごとにサブコミティーがあり、発表論文の選択やセッションの企画・運営が行われる。近年の深層ニューラルネット(Deep Neural Net:DNN)系論文のISSCCへの投稿の急増を受けて、今年(2020年)のISSCCから、「Machine Learning and AI」という新しいサブコミティーが誕生した。その主導の下で、Session 7(High Performance系)とSession 14(Low Power系)の2つのセッションにおいて計7本の論文が発表された。

 7本のうち東アジアからの論文が6本を占めた(日本 1、韓国 1、台湾 1、中国 3)。残り1本は中国アリババ(Alibaba Group Holding)の米シリコンバレー拠点からの発表であり、実質全論文を東アジア系(内4本は中国系)が占めたことは目を引いた。ただ、その分、今回のISSCCの中で新型コロナウィルスの影響を最も受けた技術分野となった。しかし、リモートないしは事前録画のプレゼンテーションにより、全体がスムーズに運営されたことは印象的だった。以下では、2つのセッションの注目論文について概要を紹介する。

 Session 7:High-Performance Machine Learningで最初に発表されたのは、台湾MediaTekの論文である(論文番号 7.1)。5Gスマートフォン向けSoC(7nmプロセスで製造)に集積された2コアのディープ・ラーニング・アクセラレーターに関する発表である。3.4~13.3TOPS/W、3.6TOPSの処理性能を持っており、2019年に韓国Samsung Electronicsが発表した同様なコア(8nmプロセスで製造)に比べて、2倍前後高い電力効率、2倍弱高い性能、3倍強高い面積効率を実現したという。技術的には、データ再利用・圧縮、量子化、ゼロ演算のスキップ、DNNの複数層融合処理など、すでにアイデアとしては知られている技術をそつなく実装しているという印象だった。

Session 7:High-Performance Machine Learningの概要
Session 7:High-Performance Machine Learningの概要
出典:ISSCC 2020東京記者会見
[画像のクリックで拡大表示]

 Session 7の2番目の発表は、米Alibabaが行った(論文番号 7.2)。データセンター向けDNN推論チップで、700MHzで825TOPS(8ビット整数)という世界トップの処理性能を実現した。チップサイズは709mm2、最大消費電力は280Wとする。プログラマビリティーも十分に配慮された実用性に富んだチップのようであるが、技術的詳細があまり開示されなかった点は残念である。なお同社のデータセンターで近日中に利用開始とのことだった。

 3番目の発表は、日本からの論文である(論文番号 7.3)。東京工業大学、北海道大学、日立製作所(日立北大ラボ)、東京大学の連名の論文で、全結合型の組み合わせ最適化問題を全並列で解くことができる新しいアニーリングプロセッサーを報告した。この発表は、今回のISSCCにおいて2件しかなかった日本の大学からの発表のうちの1件である。この発表に付随する実機デモでは多くの人が集まり、メインのディープラーニングから少し距離のある発表としては、予想外に大きな関心を集めた。

 確率的セルラーオートマトン(SCA)という新しいアニーリングモデルにより、従来の代表的な手法であるシミュレーテッドアニーリングと比べて桁違いに高速に解くことができ、問題が大きくなればなるほど、問題規模に比例してその速度比は大きくなるという。アニーリング計算は世界的に見て日本が突出して技術的な関心が高い分野であり、このような発表がAIハードウエアにおける日本のリーダーシップにつながることを期待したい。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料