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 オランダのデルフト工科大学(Delft University of Technology)、米インテル(Intel)、スイスのチューリッヒインスツルメンツ(Zurich Instruments)、オランダの応用科学研究機構(Netherlands Organization for Applied Scientific Research:TNO)、スイス連邦工科大ローザンヌ校(Swiss Federal Institute of Technology in Lausanne、EPFL)の共同チームは、極低温(3K)で動作する、高集積な量子ビット制御チップ「Horse Ridge」を、「ISSCC 2020 (International Solid-State Circuits Conference 2020)」(2月16日~20日に米国サンフランシスコで開催)において発表した(講演番号19.1)。

ISSCC 2020のテクノロジーディレクション(TD)分野の注目発表
ISSCC 2020のテクノロジーディレクション(TD)分野の注目発表
(出典:ISSCC 2020 東京記者会見)
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 「量子超越性」の実証などで、昨今の盛り上がりを見せる量子コンピューター。ゲート方式の量子コンピューター開発に関しては、その拡張性などにまだ多くの課題が残されている。将来的な量子ビット数の飛躍的拡張に対しては、量子ビットを制御する高周波回路をどのように効率的に集積・実装していくかが一つのカギを握る。一般に、量子ビット(超伝導量子ビットやシリコンスピン量子ビット)の制御には、数GHz~20GHz程度の高周波パルス信号が必要である。

 従来の量子コンピューターシステムでは、室温(300K)で動作する量子ビット制御(高周波パルス生成)装置から高周波ケーブルを介して、冷凍機内の極低温(mKオーダー)で動作する量子ビットにアクセスして制御を行っていた。すなわち従来のシステムでは、1量子ビットの制御に対して1本以上の高周波ケーブルを外部の制御装置から冷凍機内に引き込む必要がある。このシステム構成では将来的に目標とされる100万量子ビット以上の規模の量子コンピュータシステムの実現は不可能に近いことが想像に難くない。今回のISSCCでは、この問題解決への道筋が、この記事の冒頭に記した共同チームから示された。