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 ディスプレーの国際学会Society for Information Display Display Week 2020(SID 2020)は、COVID-19の影響で2020年5月から延期されてオンライン開催となり、同年8月3~7日にSymposium、Seminar、Business Conferenceなどでオンライン講演が順次スタートした。それは実質的にオンラインでのビデオ講演で、当初プログラムされていた内容をほぼそのままオンデマンド視聴でき、会期後も年末まで自由に視聴できる。従来の学会であれば期間中に重複していて聴けなかったセッションでも、バーチャル上の会場であればいつでも自由に“行き来”でき、各講演内容も最初から最後まで聴かずにポイントとなる部分だけを押さえることもできるため、情報を得るという観点では効率が格段にアップする。

図1 SID 2020の(開催中の)ログイン画面
図1 SID 2020の(開催中の)ログイン画面
静止画だがあたかも実際に参加したかのような光景を再現している。図中の企業名や文字などをクリックするとそのバーチャルブースなどにジャンプできる。(写真:日経エレクトロニクスがキャプチャー)
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 一方で、Exhibitionはバーチャルになり、実物展示に代えてのビデオでの製品紹介、カタログをそのまま掲載、あるいはその企業のWebサイトへのリンクを載せるだけなど、出展各社共に手探り状態である。リアルな商品展示でのアピールやリアルな商談が出来ないという状況をどうカバーするのか、アフターコロナのイベントを考える上では今後のさまざまなアイデアが必要であろう。

Mini LEDバックライト液晶とデュアルセル液晶をバーチャルで比較

 バーチャルイベントのメリットとデメリットを、最近のディスプレー技術でのホットな話題であるMini LEDバックライト液晶とデュアルセル液晶の比較展示で見ていきたい。両技術共に、液晶ディスプレーのコントラスト比と輝度を大きく向上させ、有機EL(OLED)を超える表示性能を実現できる技術として既に市場にも出始めている。

 Symposium講演では、4日目の8月6日のHDR(High Dynamic Range)のセッションを中心に関連内容の報告が行われている。また、Exhibitionでは中国BOE(京東方科技)が両技術の紹介ビデオを流している。Symposium講演は技術開発の内容を報告する場であり、それぞれの技術課題などをそれぞれの立場で解決した報告であり、さまざまな視点にわたるため詳細は別の機会に譲るとして、バーチャル展示の内容で考察してみる。

 BOEのバーチャル展示では、75型8K、27型UHDのMini LEDバックライト液晶ディスプレーと110型8K、98型4K, 75型8Kのデュアルセル液晶ディスプレーを展示していた。掲げられていた両技術の性能表では、Mini LEDバックライト液晶では輝度が1000~1500nitでコントラスト比が100万:1であり、デュアルセル液晶では輝度が400~450nitでコントラスト比が10万:1~15万:1という数値であった。その他の特性も含めて、先ずは両技術の違いや性能を知るという観点では、オンラインで簡便に情報が得られることの効果は大きい。