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 マイクロ(Micro)LED/Mini LEDの精力的な開発が進んでいる。COVID-19の影響下で企業の活動が制約される中、Micro LED/Mini LEDに関する開発だけは例外だ、との声が業界関係者の間から聞こえてくる。SID 2020のMicro LED関連セッションでも昨年のSID 2019を超える30件以上(ポスターを除く)の発表が行われた。さらに、量子ドット(QD)の発表も増加している。中にはQDをMicro LEDの色変換層として使うという内容も多くあり、Micro LEDと量子ドットというディスプレーの将来技術に対する期待はCOVID-19禍の中にあっても衰えていない。

すべてのディスプレー領域をカバー

 Micro LEDがこれだけ開発者側に期待される理由は、ディスプレーのあらゆる領域をカバーできる可能性があるからだ。超小型サイズから超大型サイズまでの幅広い表示領域だけでなく、現存のディスプレー応用分野に加えて、今後生み出されるであろう空中ディスプレーの様な新たなアプリケーションへの期待も後押ししている。幅広い分野に対応するためには、それぞれに適した構造や製造方法が必要になるが、この分野には年々多くの新しいプレーヤーが参入し新しいアイデアを提案し将来の実現に向けて熾烈な競争を繰り広げている(図1)。

図1  SID 2020でオーラル発表されたMicro LED/Mini LEDの内容
図1  SID 2020でオーラル発表されたMicro LED/Mini LEDの内容
講演毎に「発表組織名(講演番号)キーワード」を記載した。背景のグラフは、筆者がセミナー講演などで業界の方々に示しているMicro LED/Mini LEDの応用分野や製造技術の全貌を示している。青色の講演は一定の応用製品がイメージできる内容で、対応する応用範囲(横軸の画面サイズ)の領域をイメージして現した。「No see(論文は採択されたものの、実際の発表には登壇しなかった者)」は除外した。(図:筆者が作成)
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 図1のポイントは、この分野はまだまだ発展途上であり多くの参入者がさまざまなアイデアを出して開発を競っているという事である。背景のグラフには、筆者がセミナー講演などで業界の方々に示しているMicro LED/Mini LEDの応用分野や製造技術の全貌を示している。各講演内容のキーワードも記載しているが、多様な技術に各社それぞれのネーミングをしており新たなキーワードがどんどん生まれてくるため、本速報では説明しきれず別途のセミナー講演などの機会に紹介したい。

 1例を挙げると、この分野では先駆者の1人である米Northwestern University のProfessor であるJohn A. Rogers氏が、SID 2020で「Beyond Micro LED」として発表した内容は、ここ数年業界で議論されているMicro LEDのマストランスファーのさらに先を行く「Pixel Engines」という概念である。SID 2020で初めて発表した概念ではあるが、2019年頃から世界のカンファレンスで実質的には同じ内容をアピールしていた。CMOS駆動回路とRGBのMicro LEDを一体化した画素単位のパッケージを組み立てて行く。サイネージ用のLEDパネルでここ1~2年で普及し始めた「4 in 1パッケージ」の考え方に似ており、組み立てと歩留まりコントロールの容易さを特徴とする。

 その他にもユニークなアイデアが次から次へと出てきており、将来広く普及していくであろうMicro LEDディスプレーの構造や製造方法がどのようになっていくのか、まだまだ進化の先は見通せない。この状況は、例えるなら液晶ディスプレーの開発初期(1970~80年代)の様子と同じではないかと思える。当時、さまざまな液晶ディスプレーの実現に向けて多くの技術者が様々な液晶の方式や製造方法を開発し競ってきた結果が今日の多彩なディスプレーを実現する原動力となってきた。