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 近年、ITエンジニアの間で「技術書典」に代表される技術書限定の同人誌即売会が盛り上がりを見せている。このような即売会で販売される「技術同人誌」は、商業出版物にはない独自の切り口や鮮度の良い情報、商業出版が難しいニッチな技術の解説などが魅力だ。

セガの山田英伸氏
セガの山田英伸氏
これまで「DirectX12への統一理論」など技術同人誌を9冊出版(画像:オンライン講演を日経ソフトウエアがキャプチャー)
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セガの竹原涼氏
セガの竹原涼氏
これまで「くいっく HTTP/3 編」など技術同人誌を3冊出版(画像:オンライン講演を日経ソフトウエアがキャプチャー)
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 しかし、セガのエンジニアである山田英伸氏と竹原涼氏によると、ゲーム開発者が作る技術同人誌はまだ少ないという。

 2020年9月3日、オンラインで開催されたゲーム開発者会議「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2020」(CEDEC2020)で、両氏は「技術同人作家になろう ~働き方改革時代におけるエンジニアのレベルアップの一例~」と題して講演し、ゲーム開発者に技術同人誌の執筆を呼び掛けた。これまで、山田氏は「DirectX」などに関する技術同人誌を9冊、竹原氏はネットワークプロトコル関連などの技術同人誌を3冊出版している。

 山田氏は、「技術同人誌は、買っても、書いても、技術情報のIN/OUTを通して、エンジニアとしてのレベルアップにつながる」と説明する。竹原氏も、「技術同人誌の執筆は新しい知識をインプットするきっかけになる。仕事だと新しい技術にチャレンジするのはなかなか難しいが、技術同人誌だと失敗しても誰にも迷惑がかからないので、思う存分チャレンジできる。それに、(技術同人誌に)アウトプットすることで身に付けた知識が整理される」と執筆のメリットを解説する。

「非エンジニアリング部分も学べる」「他の自己研さん手法より優れている」

 また、「副業が解禁される時代になっても、我々(ゲーム開発者)が個人でゲームを作ることは禁止されている場合が多い。しかし、技術の解説であれば(社内規程)違反にはなりにくい」(山田氏)との事情もある。

 さらに、技術同人誌の執筆・販売活動を通して、広報活動の重要性や、会計・経理関連の知識、自己プロデュース力を学んだという。「技術同人誌を書いて得たものは、非エンジニアリング部分が多めだったように思う」(山田氏)。