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 自由視点映像配信システム「SwipeVideo」を展開するAMATELUS(東京・渋谷)が初めてCESに出展した。リモートながら「世界から30近くの引き合いをいただきました。今、各社と打ち合わせに入っています」と代表取締役CEOで創業者の下城伸也氏は話す。同社はこのところ日本で急に注目され始めたxRベンチャーだ。ユーザー(視聴者)がWebブラウザー上(アプリも可能)で自由に視点を選択・視聴できるSwipeVideoを開発。数年前から、教育、エンターテインメント、スポーツ分野で活用が始まり、特に昨今のコロナの影響で、ライブが壊滅しているエンターテインメント業界からは、引き合いが殺到しているという。

 人気の秘密を下城氏に聞いた。「これまでの視点が動く自由視点映像は、サッカー、野球などで試みられてきましたが、それは制作者が編集した自由視点であり、あくまでコンテンツの一部でした。視聴者側には映像選択の自由がなく、マルチアングルへ切り替えるスイッチング権利はコンテンツ側が持っていました。SwipeVideoは、ユーザーが視点をスマホ画面などでスワイプして選べます。換言すると、映像スイッチングの権限を視聴者に渡すシステムなのです」(下城氏)。

AMATELUS 代表取締役CEO 創業者の下城伸也氏
AMATELUS 代表取締役CEO 創業者の下城伸也氏
「自由視点映像は視聴者にスイッチングの権利を与えるものです」と話す。(出所:AMATELUS)
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SwipeVideoの画面例
SwipeVideoの画面例
このようにスワイプして視点を変える。(出所:AMATELUS)
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 なるほど、確かに画期的だ。映像とは、制作者がマルチを1本のラインに編集して届けられるものだと思ってきた(自由視点だって編集されている)が。その常識が根底から崩れる。技術的には単純で、たくさんのカメラ映像の中から1台のカメラ映像を選び、その都度、インターネットからストリーミング配信してもらう――という仕組みだ。聞いてみればシンプルだが、これまでなかった試みだ。

 なぜなかったのか。「SwipeVideo技術は2017年に特許出願し、国際出願としての特許で認定されました。それまでは、映像制作者が自由視点について研究していましたが、私はWeb技術業界の出身です。なので、Webで何ができるか、Webの閲覧者に新たな情報視聴体験としてもっとリアリティーのある情報を伝えられないかを、毎日毎日考えていました。そんな中から、今の配信方法にたどり着きました。重いデータでも軽量,高速に配信でき、5Gを待たずとも、4Gで十分に実用化できます。5Gの世界ではさらに高画質になり、低遅延で生配信が可能になります」(下城氏)。

 国内では既に多数の導入事例がある。その一つが技術教育分野。スポーツ、美容などの技術教育で、正面だけでなく横や裏側からの映像も、そこにカメラを据えれば、選択して生徒が見ることができる。

 どこがうけているのか。「例えば、スポーツインストラクター教育で大事なのが、テーピングのやり方です。膝に巻く実習では、正面だけではなく、裏からみると、巻き方のコツがよく分かります。美容師の研修では、手元を撮るカメラ映像を選択すれば、ポイントがよくつかめます。実際の授業では生徒一人ひとりの立ち位置がバラバラなので、全員が同じ情報をインプットできず1回の授業で習熟度が低いのです。最近では医療でも活用され始めました。手術の映像で手元を観察するのですが、自由に見たい視点を選べ、ズームが可能なのが好評です」(下城氏)。

 今後の計画も興味深い。その一つが5G。画質が4K、8Kになり、より鮮明に拡大できる。もう一つがUGC(ユーザーが撮影する自由視点動画)。「VOD(Video On Demand)からVOD 2.0へと言っています。スポーツの試合では、多くの人がスマホで動画を撮影していますが、それを集めると膨大な数の自由視点映像になりますね。スイッチングの権利を視聴者がゲットするだけでなく、マルチカメラ撮影もユーザーが行うのです。これぞメディアの民主化です」(下城氏)。

 CES 2021では、こうした日本での成果が評価され、冒頭で紹介したような人気に結びついた。日本初となる自由視点映像配信ベンチャーの今後が期待される。