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Industry4.0 10周年
2人の名付け親が語る
次のステップ

 Industry4.0は、2011年のハノーバーメッセで提唱されたといわれる。その10周年をきっかけとする企画が幾つかあった。その1つが“名付け親"を招いて主催者ドイツ・メッセ(司会)が質問する討論会。招かれたのはヴォルフガング・ヴァルスター氏(現ドイツ人工知能研究センター・チーフエグゼクティブアドバイザー)とヘニング・カガーマン氏(現ドイツ工学アカデミー会長)の2人だ(図3)。

図3 「Industry4.0」を10年前に提唱した“名付け親”
図3 「Industry4.0」を10年前に提唱した“名付け親”
左がヴォルフガング・ヴァルスター氏(現ドイツ人工知能研究センター・チーフエグゼクティブアドバイザー)、右がヘニング・カガーマン氏(現ドイツ工学アカデミー会長)。(出所:ライブストリーミングの画面をキャプチャー)
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 ヴァルスター氏は「Industry4.0はドイツのブランドとして定着した。取り組みのスタートも良かったし、他国よりも進んだ立場にある」と評価。カガーマン氏は「その過程では労働界を含め、社会的に広く受け入れられたのが成功の大きな要因」と指摘した。カガーマン氏はまた「10年間他国に対し、Industry4.0が可能にするビジネスモデルなどの、新しい考え方を伝え続けられた。例えば、『Society 5.0』を提唱した日本の首相と一緒に活動した。それこそがドイツの競争力だ」などとも語った*6

*6 カガーマン氏は2019年12月19日の「ロボット革命・産業IoT国際シンポジウム2019」(東京ビッグサイト、国際ロボット展会期中)に参加するなど来日の機会が多いとみえ、この討論会の中でしばしば日本に言及した。

 技術面での今後についてヴァルスター氏は「チームロボティクス」を例に挙げる。「Industry4.0ではロボットが人と協調する変化に対応しやすい工場になったが、さらにロボット同士が特徴を生かして連携する方向へ進む。機械同士のリアルタイム性の高い通信が必要になるところ、低遅延を保証する5Gが可能にした」と指摘する。

 さらに同氏は、ドイツなど欧州が主導する産業界のデータ流通基盤「GAIA-X」の成功を強く望む、とした。「クラウドシステムはおそらく米国や中国のシステムが中心になると思うが、(機密データの共有といった)ドイツのエンジニアが持つ実務面の知識(を生かしたシステムの実装)は強みだ」という。

 司会者の「次の10年もドイツは優位性を保てるか」との質問に対して、カガーマン氏は「我々は先進的だったからこそ、必然的に新しいアイデアを思いついてきた。この立場を維持する上で、Industry4.0の看板を変える必要はないし、変えるべきではない」と答えた。