20年以上続く地方銀行システム共同化の歴史の潮目が変わった。きっかけは2022年末、広島銀行が日本IBMの共同化陣営から、NTTデータ陣営に切り替える方針を表明したことだ。この「広銀ショック」を深掘りしていくと、地銀とITベンダーの関係性の変化や、これからの銀行システムのあり方が見えてくる。一連の動きが意味することを、日経クロステックで最前線を取材する山端宏実記者に聞いた。関連する記事もピックアップした。併せてお読みいただきたい。
日経クロステック増田圭祐 2022年11月に広島銀行がシステム共同化の枠組みを切り替えると表明し、他の地銀やITベンダーの関係者に衝撃を与えました。ただ、これまでも地銀は長い年月をかけてシステム共同化に取り組んできたはずです。
日経クロステック山端宏実 そもそもシステム共同化の背景には、地銀を取り巻く経営環境が年々厳しくなっているという問題があります。貸出や有価証券運用で稼げない中、システムにかかるコストをいかに落とすかは喫緊の課題でした。
結果、単独でITベンダーにアウトソーシングしていたものをやめて共同化したり、共同化の枠組みを変えたりといった動きが加速しています。近年は地銀同士の経営統合も活発化しており、その際にどちらかのシステムへ片寄せするケースもあります。毎月のように動きがあるのが今の状況です。
増田 そうした流れの中では、今回の広島銀行の決断も自然と言えるのではないでしょうか。
山端 経営統合などのきっかけがあったわけではなく、「平時」に別のITベンダーが手掛ける共同化に乗り換えるのは珍しいです。特に、広島銀行は2003年から福岡銀行と基幹系システムの共同運営を始めており、地銀システム共同化の先駆けといえる存在でした。
この広島銀行と福岡銀行の共同化の枠組みである「Flight21」は、他にも複数の地銀向けシステム共同化を展開する日本IBM陣営の中でも「優等生」的な立ち位置とみられていて、意見の相違はあるにせよ個人的には「このままいくんだろうな」と思っていました。業界の見方も同様で、今回の広島銀行の決断は、当事者であるNTTデータの幹部ですら想定外だったそうです。
変わる銀行とITベンダーの関係性
増田 経営環境の変化に迅速に対応できなければ生き残れない、という銀行側の危機意識を感じます。システム開発における銀行とITベンダーの関係性も変わってきているのでしょうか。
山端 全ての銀行がそうとは言いませんが、これまではシステムの開発から運用、保守までまとめてITベンダーに投げてしまうケースが多かったのも事実です。しかしそのままでは、新サービスの開発やFinTech関連企業との連携などにおいて、コストも時間もかかり過ぎるといった弊害が顕著になってきました。