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 コンビニの証明書交付サービスで住民票の写しを取得しようとしたら他人のものが出てきたーー。2023年3月以降、同様のトラブルが横浜市や東京都足立区、川崎市で相次ぎ発覚し、注目を集めている。開発元はいずれも富士通Japanだ。

 最初に発覚したのは横浜市だった。2023年3月27日昼ごろ、磯子区役所に誤発行の報告が寄せられると、青葉区役所や横浜市のマイナンバー専用コールセンターなどにも同様の連絡が相次いだ。最終的に同市で誤発行したのは、住民票の写し6件(12人分)、住民票記載事項証明書2件(4人分)、印鑑登録証明書2件(2人分)の計10件(18人分)である。このうち、1件はマイナンバー入りの住民票の写しだったことが判明し、個人番号の変更まで余儀なくされた。

 続いて発覚したのは東京都足立区だ。富士通Japanが横浜市でのトラブル後、コンビニ交付サービスを利用する他の自治体について調べたところ、トラブルを引き起こす可能性のあるプログラムを発見。ログを基に誤発行の疑いがある住民を区の職員が訪ねた結果、計2件(4人分)の誤発行を2023年4月28日に確認した(足立区の公表は2023年5月1日)。内訳は住民票の写し1件(3人分)、印鑑登録証明書1件(1人分)である。

 富士通Japanは日経クロステックの取材に対し、2023年4月11日時点では「横浜市以外の自治体で同様の誤発行トラブルが発生していないことを確認済み」と説明していた。それにもかかわらず誤発行が新たに発覚した理由については、「他の自治体(横浜市)で発生した事象については、同じトラブルが発生していないことを確認した。データの更新部分などを含め、総点検を実施した際に新たな不具合が発覚した」(富士通Japan)としている。

 ところが、これだけでは終わらなかった。川崎市内のコンビニで戸籍全部事項証明書を発行したところ、別人の証明書が出力される事象が2023年5月2日に発生したのだ。川崎市によると、コンビニ交付の稼働前から出張所などで証明書を交付する独自サービスを提供しており、これと連携するアドオン(開発元は富士通Japan)に不具合があった。

 一連のトラブルは国がマイナンバーカードの普及を強力に推し進める中、冷や水を浴びせる結果となった。河野太郎デジタル相は横浜市のトラブル発生後、「個人情報漏洩にも当たる事案で大変重要な問題であり、遺憾に思っている」と苦言を呈した。

 しかし、その後も同様なトラブルが立て続けに発生。事態を重く見た河野デジタル相は2023年5月9日、富士通Japanに対してシステムを停止したうえで総点検することを5月8日に要請したことを明らかにした。富士通Japanが開発したコンビニ証明書交付サービスのシステムを利用する自治体は200弱あり、異例の展開となっている。富士通Japanは「真摯に対応する」とコメントした。

 一連のトラブルを受けて個人情報保護委員会は2023年5月11日、富士通Japanと横浜市、足立区、川崎市の3自治体に対して、個人情報保護法などに基づく報告徴収と資料提供の求めを同日行ったと明らかにした。今後の総点検のなかで、他の自治体で新たな不具合が見つかる可能性もあり、その動向に注目が集まる。