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 開発するシステムで実現したい機能を抽象度の高い「モデル」として表し、そのモデルを使ってコンピューターシミュレーションを行いながら開発を進めていく手法。本来はモデルを基にしたソフトウエア開発全般を意味する言葉だが、近年は組み込みソフトウエアを含めた制御システムの開発手法を指すのが一般的となっている。特に自動車業界では、エンジンやハイブリッドシステムなどを制御する電子制御ユニット(ECU)の開発で広く導入されており、「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の実現に不可欠な手法となっている。

 モデルベース開発では、開発する制御システムだけでなく、制御される対象物もモデルとして扱う。例えばエンジンやモーター、ブレーキといったハードウエアの物理的な挙動や統計情報を数式で表してモデル化する。こうして作成した制御対象のモデルを「プラントモデル」、制御システムのモデルを「制御モデル」と呼ぶ。両モデルを組み合わせたシミュレーションで、動作確認や機能検証をしながら開発を進めることにより、設計品質の向上や手戻り工数の削減などにつなげる。

車両全体の開発にも適用へ

 自動車業界では1990年代にエンジン用ECUから導入が始まり、現在ではブレーキやステアリング、サスペンション、電動スライドドアといった様々な制御システムのECUに適用されている。車両の電装化で制御システムのソフトウエアの規模や複雑さが増していることや、制御システムの機能安全規格がモデルベース開発の採用を前提にしていることなどが理由だ。特に自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)や自動運転機能では、安全性を確保するためにシミュレーションで膨大なテストを実行できるモデルベース開発の適用が必須と言われている。

 また最近では、個々の制御システムだけでなく、車両全体の開発にモデルベース開発を適用する動きも活発化している。モデルベース開発では、実機がない状態での制御システムの動作テストに「HILS(Hardware In the Loop Simulation)」と呼ばれる専用ハードウエアを使う。従来はECUごとに個別のHILSを用意してテストをしていたが、車両全体の挙動をシミュレートするHILSを構築して、車両1台分のECUを一度にテストできる環境を整える自動車メーカーが増えている。

 自動車業界の動きに対応して、車載ソフトを開発するIT企業の間でモデルベース開発関連の取り組みが広がっている。モデルベース開発による車載ソフトを手掛ける富士ソフトは、2018年から19年にかけて福岡市や札幌市、名古屋市などで車載ソフトの開発拠点を相次ぎ新設・増設したほか、年間15~20%のペースで技術者を増強している。NTTデータ子会社のキャッツは2020年12月に社名を「NTTデータ オートモビリジェンス研究所」に変更して体制の強化を進めている。これまで培ってきたモデルベース開発の支援サービスやツールなどのノウハウを基に、CASEの研究開発に取り組むという。