DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン技術を使うことで特定のリーダーや管理者を置かず、ある目的を達成するための組織を参加者が協業して運営する形態を指す。日本語では分散型自律組織と訳される。

 参加者は互いに平等な立場で運営に関わることができ、組織運営や利益分配などのルールはブロックチェーン上で動作する取引自動化のプログラム「スマートコントラクト」で実装する。原則として、誰もがDAOの掲げた目的やルールを了解したうえで自由に参加できる。参加する際はそれぞれのDAOが発行するガバナンストークンを取得する。

 スマートコントラクト機能を実装したブロックチェーンであるイーサリアム(Ethereum)を開発したヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が考案者とされている。イーサリアム財団は、DAOの特長を「インターネット上で他人同士が協業するための安全な方法」「特定の目的を達成するための資金を安全に託せる場所」と説明している。

 ガバナンストークンは無料で発行する場合もあるが、立ち上げ資金が必要となるプロジェクトでは通常、有料で発行して参加者から資金を集める。一定の貢献をした参加者に対価としてガバナンストークンを発行するDAOもある。株式会社に例えれば、DAOにおけるガバナンストークンは株式に相当する。

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 DAOは、特定の管理者を置かない分散型のインターネット技術である「Web3」を実現する中核的な概念の1つと見られている。同じくWeb3を実現する技術であるDeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)と親和性が高く、組み合わせたプロジェクトも存在している。これまではイーサリアムを使って運営するDAOが多かったが、スマートコントラクト機能を備えた他のブロックチェーンでの実装例も増えている。

 海外では営利・非営利を問わずさまざまなDAOが発足している。例えば、ブロックチェーン上で資金の貯蓄や借り入れができるDeFiサービス「MakerDAO」、発注者とフリーランス、仲介者が対等に参加して分散型の人材マッチングを実現するサービス「Braintrust」などは、DAOの仕組みを用いて組織を運営する。新たな暗号資産(仮想通貨)を開発・運営するプロジェクトでもDAOを採用する例が増えている。

 日本では2021年ごろから、地域創生やコンテンツの企画制作、シェアオフィスの運営などで、参加者をDAOで組織化するプロジェクトが発足している。例えば、堤幸彦氏ら映画監督3人が立ち上げ、漫画や映画などのコンテンツ制作を目指す「SUPER SAPIENSS」、Web3の体験者を日本で増やすため初心者を幅広く受け入れることを掲げる「和組DAO」、地域創生を目的に複数の自治体が参画する「美しい村DAO」、住民がDAOで運営に関わるシェアハウス「Roopt神楽坂 DAO」などがある。