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 紙の教科書の全内容を、構成や配列を含めてそのままパソコンやタブレットなどで表示可能にした教材のこと。紙の教科書と同じ出版社が発行する。政府は2021年度予算で「学習者用デジタル教科書普及促進事業」として22億円を盛り込んだ。前年度の0.2億円に対し、一挙に110倍と大幅増になっている。

 小学校で2020年度、中学校で2021年度、高等学校で2022年度からそれぞれ始まる新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて2019年4月に施行された改正学校教育法で、授業でのデジタル教科書の使用を正式に盛り込んだ。

 文科省は紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用する際に、各教科の授業時数の半分未満とする、紙の教科書も使える状態で授業を進める、などの基準を設けている。ただし、読字障害などにより紙の教科書を使用して学習することが困難な児童・生徒に対しては、教育課程の全てにデジタル教科書を使用可能としている。

 デジタル教科書は紙の教科書と同じ構成としつつ、動画や音声の再生、本文や図版の拡大などデジタルならではの機能を備える。さらに個々の児童・生徒がどのページまで読んだかなどの学習データを教員が把握できる機能もある。これまでのように教室で一斉に授業を進める画一的な学びから、生徒一人ひとりの習熟度に合わせて学習を進める個別最適化された学びへの転換を果たすために、デジタル教科書の果たす役割は大きそうだ。

 デジタル教科書を活用する環境整備も進んでいる。政府が掲げるGIGAスクール構想により、児童・生徒が「1人1台」端末を活用する環境が整いつつあるためだ。文部科学省の2021年3月の発表によると、調査に回答した1812自治体のうち97.6%の自治体で2021年3月までに端末調達を完了し、授業で活用できる状況だという。

「2024年度全面移行」は取り下げ

 内閣府が2020年12月18日に公開した「新経済・財政再生計画改革工程表2020」によると、小中学校のデジタル教科書の普及率は2020年3月時点で8.2%。同工程表では2025年度までに普及率100%を目指すとしている。

 だが、デジタル教科書への移行は思うように進んでいない。政府は2021年3月、児童・生徒への健康への影響や教員の習熟度への不安などを理由にデジタル教科書への完全移行を見送り、当面は紙の教科書との併用を続ける方針を示した。従来は小学校の教科書改訂に合わせて2024年度に、紙の教科書からデジタル教科書に完全移行する計画だった。

 デジタル教科書の普及を妨げる要因の一つとして考えられるのが、導入にかかる費用だ。小中学校の紙の教科書は無償だが、デジタル教科書は対象外となっている。そのためデジタル教科書を学校で導入する際には、学校や自治体の負担となる。

 全国で130の自治体が参加する全国ICT教育首長協議会は2021年4月7日、萩生田光一文部科学大臣に対してデジタル教科書への財政的支援を提言した。