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 法人や個人の間における契約を、紙の契約書や印鑑などを利用せずに、電子的な文書によって完結させるITサービスのこと。一般にSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の形で提供している。

 PDFなどの電子文書への押印はフリーソフトを使っても可能だ。しかし文書に付けられる印影は単なる画像データであり簡単に複製できてしまうので、契約書としての法的な証拠能力は低い。それに対して、電子契約サービスは改ざん検知の仕組みなどにより契約書の信頼性を担保する。

 電子契約サービスでは、まずアカウントを持つ利用者がクラウド上で契約書などの文書を作成する。契約相手に対しては二段階認証などにより本人確認を行う。

 代表的な仕組みはこうだ。文書を作成した利用者が相手のメールアドレスと携帯電話番号を登録する。契約相手は送られてきたメールのリンク先にアクセスし、別途SMS(ショート・メッセージ・サービス)などで受け取ったコードを入力する。これにより契約相手は本人であることが確認され、契約書の内容を確かめて押印できるようになる(実際には契約書に印影の画像データを貼り付ける)。

 改ざん検知の仕組みには電子署名やタイムスタンプといった既に確立された技術を用いる。押印した契約書などにサービス側で電子署名を付与し、改ざんの有無を検知できるようにする。さらにタイムスタンプを付与することにより、文書がその時点から存在するのを証明する。電子署名やタイムスタンプは、既存の認証サービス事業者が提供するものを利用するのが一般的だ。

新型コロナ禍で導入機運が高まる

 電子契約サービスが一躍注目を浴びるきっかけとなったのは、2020年4月14日の竹本直一IT政策担当大臣の発言だ。竹本大臣は記者からの「ハンコ文化がテレワークの障害になっているのではないか」との質問に対して「しょせん民・民の話だ」と述べ、民間だけで解決すべき問題との認識を示した。これを受けGMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長は自身のTwitterアカウントで全社的な印鑑廃止を宣言、同社は4月17日に電子契約への移行を表明するプレスリリースを出した。

 日本における電子契約サービス市場は現在、10以上の電子契約サービスが乱立している。弁護士ドットコムの「クラウドサイン」や米ドキュサインの「DocuSign」が存在感を示すものの、電子契約を導入した企業はまだ少ないのが現状だ。

 だが新型コロナウイルス禍により、BCP(事業継続計画)の観点から電子契約サービスの必要性が明らかになった。テレワークへの移行が求められる中、「紙とハンコ」がボトルネックになると企業が気付いたためだ。ただし電子契約サービス本来のメリットは、ペーパーレス化や印鑑の廃止により業務を効率化できる点にある。信頼性に問題がないことも認知され始めている。新型コロナ禍をきっかけにその有用性に気付く企業が増え、導入の動きは加速しそうだ。