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 海底ケーブルは、大陸や島々をつなぐために海底に敷設された通信ケーブルである。インターネットやモバイル通信など、世界中で高速・大容量通信のサービスを実現する「通信の大動脈」だ。

中継器で光信号を増幅

 海底ケーブルの歴史は古く、1850年代に英仏を結ぶドーバー海峡間に敷設された海底ケーブルが世界初とされている。伝送メディアとしては、長らく銅の同軸線が使われたが、1980年代後半には高速・大容量通信を実現する光ファイバーが導入された。

 問題は伝送距離が極めて長いことだ。例えば、日本と米国を結ぶ太平洋横断の海底ケーブルは約9000kmになる。1万kmを超える場合もある。こうした長い距離では途中で光が減衰してしまい、受信側で正しい情報を取り出せなくなってしまう。

 そこで重要な役割を担うのが中継器だ。一定間隔に配置した中継器で弱まった光信号を増幅することで、長い距離でも正しく情報を伝えられる(PICT1)。

PICT1●中継器で光信号を増幅しながら長距離を伝送
PICT1●中継器で光信号を増幅しながら長距離を伝送
(イラスト:なかがわ みさこ)
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光のまま増幅する技術が登場

 中継器で使う技術は進化を遂げてきた。1990年代前半までは「3R中継技術」が使われていた。これは光信号をいったん電気信号に変換し、増幅(Reamplification)、時間的なずれの修正(Retiming)、信号波形の整形(Reshaping)といった処理を施した上で、光信号に再変換する。この方式は変換器にコストがかかるのが課題だった。

 1990年代後半になると、光信号を電気信号に変換せずに、光のまま増幅する技術が実用化された。これは「エルビウムドープファイバー増幅器(EDFA)」という光増幅器を使う。

 光ファイバーの断面を見ると、中心部に光を通すコアがあり、その周囲にはコアに光を閉じ込めるクラッドがある。通常、コアは石英(二酸化ケイ素)で作られている。EDFAではコアにエルビウムという物質を添加したエルビウムドープファイバー(EDF)を使う。

 情報を載せた光信号には1550nm帯の波長の光を使うが、EDFAではそれとは別に励起光と呼ばれる1480nm帯の光を利用する。励起光を当てた状態のEDFに1550nm帯の光信号が通ると、励起光のエネルギーで光信号を波長を変えずに増幅できる。これにより低コストかつ高信頼性の中継器を実現できた。