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 全国の国立大学や国立研究開発機関などのスーパーコンピューターの計算能力を一元的に大学や研究機関、企業に所属する研究者に提供するための基盤で、「High Performance Computing Infrastructure」の略称。文部科学省の委託事業として高度情報科学技術研究機構(RIST)神戸センターが窓口となり、2012年9月から提供を開始した。東京大学や東京工業大学、京都大学など9大学と、理化学研究所や産業技術総合研究所、海洋研究開発機構、最先端共同HPC基盤施設が保有するスパコンの計算能力を利用できる。

 HPCIのスパコンは国立情報学研究所(NII)が構築・運用している学術情報ネットワーク(SINET)で接続している。SINETにアクセスできる環境があれば、利用権のあるスパコンをリモートで利用できる。利用者は基本的に研究成果を査読付き論文や特許などで公表することが義務となっている。

 HPCIでは「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)」に基づいて開発された理化学研究所の「京」をフラッグシップシステム、それ以外のスパコンを「HPCI第二階層」と位置付けている。京は2019年8月に供用を終了しており、その後継機に当たる理研の「富岳」が次世代のフラッグシップとなる。京や富岳の運用や管理は理研が担う一方、HPCI第二階層のスパコンやネットワークの運用管理は、RISTが理研や東大などと共同で実施している。

 フラッグシップのスパコン、HPCI第二階層のスパコンとも、利用者の選定はRISTが一括して担当する。どちらも年に1度募集があり、採用されれば翌年度の1年間を通して無償で利用できる。申請の際には2018年度までは京を含むHPCIのスパコンの中から第2希望まで、京の供用が終了した2019年度以降はHPCI第二階層のスパコンの中から第3希望まで利用したいスパコンを指定できる。2020年度の利用申請は2019年8~10月に実施し、物理や化学、工学などの分野から118件の応募があった。

コロナ禍の早期収束に向け活用広がる

 富岳は本来2021年に運用を開始する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて文科省と理研で協議した結果、1年前倒しし2020年4月から運用を始めた。治療薬の開発や空気中でのウイルス飛散のシミュレーションなど、新型コロナに関連した研究に対して優先的に計算能力を提供している。6月16日時点で5件の研究で利用している。前倒し運用での研究課題の選定は理研が実施し、2021年以降はRISTが選定を担当する。

 HPCI第二階層のスパコンも年に1度の公募とは別に、2020年4月15日に新型コロナ関連の研究課題の臨時募集を開始した。6月15日時点で13件の研究が進んでいる。

 富岳をはじめとするHPCIのスパコンを新薬の候補物質の探索などに活用することで、新型コロナ治療薬の早期開発が期待できる。膨大な計算能力を研究者に無償で提供するHPCIの意義は、新型コロナ禍を契機に今後さらに大きくなりそうだ。