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 中国政府が2022年2月に開始した、データセンターなどを整備する国家プロジェクト。北京や上海、広東省など主に東部の主要都市周辺に集中していたデータセンターを西部にも整備するほか、それらのデータセンターや各都市をつなぐネットワークの構築も進める。

 中国政府が推進する社会のデジタル化に伴いデータ処理需要は急増しており、それが同プロジェクトの始動につながったとみられる。「(中国が2021年に発表した)第14次5カ年計画ではデジタルという単語が75回も出ており、第13次5カ年計画の5回から大幅に増えた」。北京にある対外経済貿易大学の西村友作教授はそう指摘する。

 中国政府は同プロジェクトの具体的な整備エリアとして8地域・10カ所を示している。北京周辺、上海周辺、広東省・香港周辺といった東部の大都市のほか、西部では甘粛省や内モンゴル自治区、貴州省、寧夏回族自治区といった地域が指定されている。

 東部と西部のデータセンターでは役割が異なり、東部は産業用インターネット、金融、災害予測、遠隔医療、オンライン会議、AI(人工知能)など、処理速度が重視される用途を中心とする。西部はEC(電子商取引)やオフラインデータの解析など、東部と比べ処理速度がさほど重視されない用途に向ける。

 同プロジェクトの背景には電力供給を巡る国内事情もある。一般にデータセンターはサーバーに加え、サーバーから出る熱を冷却する空調装置が不可欠で、大量の電力を必要とする。社会のデジタル化が進むにつれ「電力の安定供給は非常に重要な要素となっている」と日本貿易振興機構(JETRO)の河野円洋北京代表処経済信息部部長は指摘する。

 現状、中国東部では広東省の韶関や北京近郊の河北省張家口などがデータセンター集積地となっており、近隣の発電所から電力の供給を受けているが、これらの都市でさらにデータセンターが増え続ければ、電力不足で停電を起こす事態も懸念される。一方で西部では近年、太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電所の整備が進んでいる。ただ広域の送電網が十分に整っておらず、「棄光」「棄風」と呼ばれる余剰電力が問題とされてきた。

 中国では過去にも水資源の「南水北調」、天然ガスの「西気東輸」、電気の「西電東送」といった国家プロジェクトを実施してきた。同様にデータセンターを西部に誘導することでデジタル化に伴うデータ処理能力の増強を図り、同時に電力の地産地消を進めて電力需給の地域間ミスマッチを解決する狙いもある。

 一方で課題もある。データセンターの運用に必要なネットワークをどう整備するか、現状では東部に集中しているデジタル人材を西部でどう育成するか、データセンターの電力を再生可能エネルギーでどこまでまかなえるのか、など不透明な部分は多い。同プロジェクトの完成時期も明確になっていない。

 ただ中国は官民とも、課題があってもまず計画を実行し、その後発生した問題に順次対処していく、アジャイル型の推進スタイルが多い。西部でのデータセンター整備やデジタル活用は急速に進みそうだ。