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 「デジタルの双子」を意味する。IoT(インターネット・オブ・シングズ)などにより収集した物理空間の情報をデジタル空間に送ることで、現実世界を模した「双子」となる世界をデジタル空間内に再現したもの。

 デジタルツインは特定のITプロダクトを指す言葉ではない。物理空間のデータを収集するセンサーや3Dスキャニング、デジタル空間の情報を現実世界に再現するAR(拡張現実)、VR(仮想現実)などの技術を総称する概念だ。

 現実世界を再現したデジタル空間においてシミュレーションを実施し、その結果を現実世界の活動へフィードバックするといった形で活用する。センサー情報を基にエンジンの状況を推定する保守システムや、新型コロナ禍で活用されたウイルス飛散シミュレーションなどが一例である。

 物理空間に変更を加えず迅速にシミュレーションできることから、不確実性の高い事業環境への対応や、顧客への個別最適化したサービス提供に寄与する概念として、デジタルツインに注目する企業が増えている。

 調査会社の米マーケッツ&マーケッツによると、2019年に約38億ドルだったデジタルツインの市場規模は、2025年までに約358億ドルへ拡大する見通しだ。

幅広い分野で実用化の波

 日本政府が提唱する「Society5.0」においても、デジタルツインはキーテクノロジーの1つだ。経団連はデジタルツイン基盤を「センサーなどから得られる大量のデータ等を基にサイバー空間上へ精緻なモデルを組み上げることで、サイバー空間上でのより高精度の実証、予測精度向上、最適化を可能とし、超スマート社会を実現する基盤」と位置づける。

 国土交通省は2021年6月に「Project PLATEAU」において3D都市モデルの活用に向けたビジネスコンテストを実施。東京都でも同月、都市のデジタルツインの社会実装に向けた検討会を開始した。

 産業界でも活用が進む。例えば、JFEスチールでは銑鉄を作る高炉の内部状態をデジタルツインでシミュレートし、異常の予兆を検知する。コマツは建設現場のデジタルツインを作成、顧客の施工状況のリアルタイム共有などに役立てる。クボタはスマート農業の分野で、人工衛星を用いて取得した農地データを基にスマートフォンなどで作付け状況を管理できるサービスを提供する。

 AI(人工知能)を使ったSNS(交流サイト)分析を手掛けるSpecteeは水害時の浸水範囲をリアルタイムに3Dマップ上に再現、防災に活用する。武田薬品とPwCコンサルティングはデジタルツインでクローン病の治療シナリオをシミュレートするツールを実用化した。

 デジタルツインの今後について、野村総合研究所の小宮昌人主任コンサルタントは「人のデジタルツインが発展の鍵になる」と指摘する。例えば熟練した職人の動きをデジタル空間で正確に再現できれば、属人化した技術を見える化できる。企業のオペレーションそのものの商材化も可能となり、新しいビジネスを生み出す可能性を秘める。