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 上空に飛ばした人工衛星や無人航空機から地表に電波を発信し、地上の基地局でカバーできない場所でも通信可能にするネットワークシステムのこと。砂漠や山岳部、海上など通信インフラが未整備のエリアや、広範囲で基地局が停止したエリアにおいて通信会社などが通信サービスを提供するのに使う。

 国際電気通信連合(ITU)によると、インターネットを一度も利用したことのない人は世界人口の37%に相当する29億人に上る。NTNはこうしたデジタルデバイドの解消や、災害時の通信手段の確保に役立つとして、様々な企業が新規参入の準備を進めている。

 先行企業の1社が起業家のイーロン・マスク氏率いる米スペースXだ。衛星インターネット接続サービス「Starlink(スターリンク)」の試験提供を2021年に始めた。2022年2月にはロシアから侵攻を受けたウクライナ政府の要請に応じて即座に同国でのサービス提供を開始し、一躍有名になった。NTNの商用化を巡っては同社以外にも、英政府やソフトバンクグループが出資する英ワンウェブ、米アマゾン・ドット・コムなどが、衛星の打ち上げなどのインフラ整備を着々と進めている。

 NTNで「基地局」の役割を担う設備は、主に地表からの高度の違いによって3種類ある。1つ目は高度約3万6000キロメートルの静止軌道衛星(GEO)だ。地球の自転と同期して周回し、地上からは空の一定範囲に止まって見える。高度が高いため3基の衛星で地球全体をカバーできる。ただ衛星までの距離が遠く、データの伝送遅延は大きい。電波を高出力で飛ばす必要があり端末の小型化が難しい面もある。

 2つめはStarlinkなどが採用する低軌道衛星(LEO)だ。高度は数百キロ~2000キロメートルで、GEOよりも伝送遅延を抑えられる。LEOは静止衛星ではなく、上空で常に移動する特性がある。そのため常時接続の通信環境を広範囲で構築するには、多数の衛星を打ち上げて連携させる必要がある。こうした運用方式を「衛星コンステレーション」と呼ぶ。

 3つめは高度約20キロの「HAPS(High Altitude Platform Station、高高度プラットフォーム)」だ。無人航空機に太陽光パネルやバッテリー、基地局を搭載。温度や気流が安定しており、太陽光発電の妨げとなる雲の影響を受けない成層圏に滞空させ、無着陸で長期間飛行させる。地表に通常の携帯電話の電波を飛ばすため、通常のスマートフォンを使えるのが特徴だ。

 日本では携帯電話各社がNTNの新サービス創出に力を入れている。例えばソフトバンクとNTTグループはHAPSの開発に積極的。ソフトバンクには、GEOやLEOによる衛星通信サービスを日本で商用化する計画もある。

 KDDIはSpace Xと2021年9月に業務提携を結んだ。スターリンクを国内基地局のバックホール回線として利用する方針だ。楽天モバイルも高度約700キロメートルに浮かぶ衛星を使って通常のスマホと直接通信する「スペースモバイル計画」を、米AST&サイエンスと組んで進めている。同社は2023年の実用化を目指す。