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 人工知能(AI)をはじめとする情報科学の手法を応用し、材料開発の効率を高める取り組み。MIと略される。

 一般に化学業界やエネルギー業界では、新たな素材や触媒などの材料開発が競争優位を左右する。その一環として、膨大な物質の組み合わせから所望の機能や特性を持つ最適な材料を探索するためにMIを用いる。

 具体的には、機械学習を活用して過去の実験や論文、シミュレーションデータを解析。素材の分子構造や組み合わせの案、製造方法などをいくつか推測する。研究者はそれを踏まえて実験に取り組む。

 MIの登場以前の研究者は、経験と勘を基に実験で新たな材料を合成し、その特性を調べることで開発を進めていた。MIの活用により研究者は、従来よりも効率的に目標とする材料を発見できる。

 MIを導入するメリットについて旭化成の河野禎市郎インフォマティクス推進センター長は「開発期間の短縮による事業競争力の強化、コスト削減、人間では考えつかない組み合わせの発見につながる革新性」を挙げる。

 MIへの取り組みは近年、各国で活発になっている。端緒となったのは2011年、米国が最新の情報科学を活用し材料開発の期間短縮や新材料の発見を目指すプロジェクト「Materials Genome Initiative(MGI)」を始めたことだ。以降、米国に加え欧州や中国、韓国、日本などが国家プロジェクトを開始した。

 日本では2015年に物質・材料研究機構(NIMS)、2016年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がそれぞれプロジェクトを始動。産学官合同の推進体制が整った。

データ整備や人材に課題も

 MI導入には課題もある。情報科学の手法を用いるには十分なデータ基盤と解析技術が必須だ。例えば機械学習の実行にはデータが不可欠だが、実験データは紙やExcelファイルなどで保管することも多い。まずは膨大なデータの入力やフォーマットの用意が要る。

 データを解析して材料候補を提案できるようなアルゴリズムの開発も必要だが、材料開発とデータサイエンス双方の知見を持つ人材は少ない。シミュレーションには膨大な時間がかかることもある。

 こうした中、日本の化学メーカー各社は人材育成やツール開発に取り組む。例えば旭化成は、MIに対応できる「R&Dデータサイエンス人材」を2019年から3年間で630人育てるため、自社で教育プログラムを作成した。

 大手メーカーがスタートアップと協業する動きもある。ENEOSはAI開発のPreferred Networksと共同で、物質を原子レベルで再現し新材料を探索できる汎用シミュレーターを開発。深層学習を使い、これまで数時間~数カ月かかっていたシミュレーションを数秒単位でできるようにした。

 MIの中長期的な発展には機械学習などのソフトウエア技術に加え、演算能力や記憶容量などのハードウエア技術の向上も欠かせない。将来は量子コンピューターの活用にも期待がかかる。