化学実験の結果を予測する機械学習モデルを開発する手法の1つ。「原子間ポテンシャル」と呼ばれる原子の間に働く位置エネルギーの予測に機械学習を適用する。ニューラル・ネットワークを適用する場合は「ニューラル・ネットワーク・ポテンシャル」という。

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 化学メーカーなどでは近年、材料開発の効率を高めるために機械学習などを活用するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)に取り組む例が増えている。そうしたMIに向けた技術の1つとして、機械学習ポテンシャルの研究が進んでいる。

 材料開発では、物理的な化学実験とコンピューターを活用した仮想的な実験を併用する。仮想的な実験の一環としてMIを活用する場合、膨大な実験データを必要とするため、実験データを増やすためにも富岳などのスーパーコンピューターを活用したシミュレーションは欠かせない。

 化学実験を分子レベルでシミュレーションする場合、分子の中で起こる電子のふるまいなどにより原子間で働くエネルギーの変化などの量子力学の物理現象をコンピューター上に再現する必要がある。こうした計算は「量子化学計算」や「第一原理計算」と呼ばれており、計算量は膨大になる。スーパーコンピューターを使っても、計算結果を出すのに数日かかったり、現実的な時間では計算ができなかったりする場合もある。

 機械学習ポテンシャルでは、スーパーコンピューターによる実験シミュレーションなどの量子化学計算の結果などを教師データとして使い、実験結果を予測するモデルを開発する。第一原理計算などのシミュレーションと比較しても、圧倒的に短い時間で結果が分かり、材料候補の絞り込みにかかる時間を短縮できる可能性が高い。

 一方でそうした予測の前段階、具体的には学習するためのデータを集める過程で量子化学計算が必要であり、スーパーコンピューターなどでの膨大な計算が必要という難点もある。