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 業務の内容が変化することに伴って、新たな業務で必要になる知識や技術を習得するために学習すること。リスキルとも呼ばれる。似た言葉にリカレント教育があるが、こちらは主に企業などの組織を離れてから大学などで学んで新たなスキルを身につけ、再び組織で働くことを繰り返す学び方を指す。これに対してリスキリングは主に、組織に属して働きながら新たなスキルを得ていく学び方を指す点が異なる。

 最近では人工知能(AI)や高度なデータ分析など、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に不可欠なデジタル技術を体得するという文脈で使うことが多い。

米アマゾンは7億ドルを投資

 米アマゾン・ドット・コムが2025年までの6年間で、10万人の従業員に7億ドル以上を投資してリスキリングを実施するなど、海外の大企業によるリスキリングの動きがここ数年で目立つようになった。

 特に2020年1月に開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)において、第4次産業革命に対応するため「2030年までに全世界10億人をリスキリングすること」が宣言され、一気に注目度が上がった。

 日本でもリスキリングに着手する企業が増えている。例えば日立製作所は2020年から2021年にかけて、国内グループ企業の全社員約16万人を対象に、「DXとは」「課題の定義」「実行計画の立て方」「計画の進め方」といったDXの基礎教育を実施している。グループ全体でITとOT(装置などの制御技術)を組み合わせたソリューション開発に注力しており、生産現場やスタッフ部門で働く社員にもDXの知識習得が必要と考えたとしている。

 同じくキヤノンも工場勤務者を含む1500人を対象にプログラミングなどを学ばせ、クラウドやAI関連の業務ができるようにする取り組みを始めている。

 取り組む企業が増えそうなリスキリングだが、懸念点もある。リスキリング関連の普及促進を図るジャパン・リスキリング・イニシアチブの後藤宗明代表理事は「事業上の意義について従業員に十分な説明のないまま、単なるデジタル関連の再教育だと捉えるとうまくいかないリスクがある」と指摘する。「従業員が必要性を理解しておらず、教育の途中で離脱するケースは少なくない」(後藤代表理事)。

 従業員へのリスキリングは競合他社の攻勢や他業種からの新規参入への備えとなり、ひいては自社の存続や従業員の雇用につながることなど、リスキリングの意義を従業員へ丁寧に説明することが重要だと後藤代表理事は語る。リスキリングに成功した社員にどう報いるのかという将来像の共有も大切という。

 リスキリングで学んだ従業員を、すぐに現場に投入しないのもポイントという。学んだ内容がすぐに実践で通用するとは限らないためだ。「実践環境に近い状況でトレーニングさせたり、メンターを付けてOJT(職場内訓練)を行ったりといった配慮が必要だ」と後藤代表理事は語る。