エッジコンピューティングは、センサーやデバイスなどからのデータを、発生した現場に近い場所(エッジ)で処理する技術や考え方のこと。エッジ側で動作するハードウエアがセンサーやデバイスのデータの収集や処理を担い、処理されたデータをクラウドなどのサーバーに送信して利用するのが一般的だ。通信量やクラウド側の処理を減らして、システム全体の処理速度やセキュリティーを高める効果がある。

 センサーやデバイスをインターネットにつないでデータを活用するIoT(インターネット・オブ・シングズ)を実現するうえで、通信や処理性能、セキュリティーなどの課題を解決する仕組みとして注目されている。

 エッジ側のシステムに求められる機能は大きく4つある。(1)現場に設置されているセンサーやデバイスといった機器から収集したデータをデジタル化してクラウドへと送信するコネクティビティー機能、(2)音声や映像のような非定型データなど、多種多様なデータの最適化処理の機能、(3)センサーやデバイスからのデータを分析して必要な場合はすぐに現場の機器に反映できる高速化機能、(4)工場などの過酷な環境にも対応できるセキュリティーと保守性――である。

 これらの機能を活用することで、エッジコンピューティングの適用分野は多岐にわたる。例えば建設分野では、工事現場の様子をドローンで撮影し、撮影した映像を基に工事の進捗を可視化する用途が挙げられる。このとき、撮影した映像をエッジ側のサーバーで処理してからクラウドに送信することで、通信量を抑えることができる。

 エッジとクラウドにまたがって、AI(人工知能)の処理を分散して実行する構成も、エッジコンピューティングの典型的な活用例だ。例えば、クラウド側の「学習機能」とエッジ側の「判定・予測機能」のAIが協調処理を実行するケースだ。エッジ側では、データの収集やデジタル化、データの抽象化、極小化などにAIを利用して、クラウドにデータを送信。クラウドのAIではデータの可視化や分析、予測を実行する。判別モデルを更新したらエッジ側のAIに実装し、判定や予測、リアルタイム制御をエッジ側で実行できるようにする。

AI(人工知能)の処理をエッジとクラウドに分散して実装する
AI(人工知能)の処理をエッジとクラウドに分散して実装する
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 セキュリティーやプライバシー保護にもエッジコンピューティングは有用だ。例えば監視カメラの映像といった個人を特定できるデータをそのままクラウドへ送信すると、情報漏洩のリスクが高まる可能性がある。エッジのサーバーでデータを処理・加工して匿名性を確保したデータだけをクラウドに送る構成にすれば、漏洩のリスクを軽減できる。

 自動車の自動運転のように、リアルタイムの反応が必須の場合などもエッジコンピューティングが欠かせない存在になる。例えば遠隔自動運転を実現する場合、通信とデータ解析に伴う遅延時間を短くすることが重要になる。通信には5G(第5世代移動通信システム)を利用し、エッジでの解析処理の組み合わせが不可欠とされている。