PR

 ヤマハ発動機が4輪車開発を断念した。2013年に4輪車事業への参入を表明して研究を進めてきたが、新構造の車体の量産化や採算性の課題を解決できなかった(図1)。2018年12月に開いた新中期経営計画の発表会で、同社社長の日髙祥博氏が明かした。

図1 4輪車事業への参入表明から約5年で「凍結」を決断
図1 4輪車事業への参入表明から約5年で「凍結」を決断
2013年以降、3度の「東京モーターショー」でコンセプト車を披露してきた。当初は2020年までに量産する計画だったが、2017年12月に当時社長だった柳弘之氏が計画を見直した。
[画像のクリックで拡大表示]

 「正直ホッとした。強豪ひしめく4輪車市場で戦うのは相当厳しいと思っていた」。4輪断念の一報を聞いたヤマハ発動機の社員はこう漏らす。参入表明から5年をかけても量産のメドが立たず、主力の2輪車事業でもやるべきことは多い。ロボティクスや農業、医療など新たな成長の芽も育ち始めていた注1)

注1)ヤマハ発動機は2021年3月までの新中期経営計画を策定した。2輪車以外のロボティクスや農業、医療などの成長を見通し、売上高は2018年度(2018年4月~2019年3月)比で約2割増の2兆円を目指す。連結営業利益は同約2.5割増の1800億円を狙う。売上高営業利益率は同0.3ポイント伸ばして9.0%とする目標を掲げる。

 悲願だった4輪参入─。日髙氏は2018年1月に社長に就任し、「普通乗用車の領域に事業として進んでいくのは、いったんフリーズ(凍結)する」決断を下した(図2)。堅実路線を選んだ。既に開発チームは解散。英国拠点で研究してきたメンバーは帰国している。

図2 ヤマハ発動機社長の日髙祥博氏
図2 ヤマハ発動機社長の日髙祥博氏
2018年12月11日に同社が開いた新中期経営計画の発表会で説明した。