ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)で自動運転技術の研究を率いるトーマス・フォルム(Thomas Form)氏は2018年11月、同技術の安全性と信頼性を評価することの必要性を都内で説明した(図1)。VWを含むドイツの産官学が連携して開発中の自動運転技術の評価手法を他地域で広めて、世界標準化を進める布石にする。

VWは、BMWやダイムラー(Daimler)、ボッシュ(Bosch)などと、「ペガサス(PEGASUS)」と呼ぶ自動運転技術の安全性や信頼性の水準と評価手法を決めるドイツの国家プロジェクトを進めている(図2)。2016年に始め、2019年6月に終える見込み。
ただし終了後もプロジェクトを継続し、ISO(国際標準化機構)で評価手法の標準化を目指す考えである。「(ドイツ政府からプロジェクト継続用の)予算を得られる見通し」(フォルム氏)と明かした。
フォルム氏は、自動運転技術の安全性と信頼性を高めることの難しさを象徴する例として、冗長化に言及した(図3)。自動運転の基本機能は、バックアップ機能を設けて冗長化する考えが主流である。ある機能が失陥したとしても、運転を継続できる仕組みにする。
ただフォルム氏は、「冗長性を高めすぎるとシステムが複雑になり、行きすぎると信頼性を損なう」と懸念する。冗長性と信頼性のバランスの設計が重要になる。
フォルム氏は一例として、経路計算の冗長度を高めて、異なる手法で常に3種類の経路を計算する場合を挙げた。
(1)ルールベースで計算した経路と(2)周囲を認識して予測する計算過程の一部に深層学習といった人工知能(AI)技術を使う経路、(3)計算過程の大半に深層学習を使う経路─である。