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 中国を中心に5億5000万人もの登録ユーザーを抱える配車アプリ最大手の滴滴出行(Didi Chuxing)。「MaaS(Mobility as a Service)」時代を見据え、世界進出を加速させている。同社Vice President of Network and MarketplaceのXiaohu(Tiger) Qie氏に戦略を聞いた。 (聞き手=久米秀尚)

2012年の創業から7年で、企業評価額は560億ドル(1ドル=113円換算で6兆3280億円)に達した。一方で、「AI(人工知能)で配車」をうたうライバルは続々と登場している。

 当社は世界最大級のモバイル交通プラットフォームを運用しており、1日当たりの乗車回数は3000万回に上る()。プラットフォーム上で処理するデータ量は同4800Tバイトと膨大だ。毎日100Tバイト分の車両の走行軌跡(位置情報)データがクラウド上に新規に追加され、乗車の需要を予測したり最適ルートを検索したりするAIに磨きをかけている。

図 登録ユーザーは5億5000万人に
図 登録ユーザーは5億5000万人に
AIを使った配車アプリ。日本の大阪やオーストラリア、ブラジル、メキシコなどにも進出している。(出所:滴滴出行)
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 需要予測とは、どの場所のどの時間にどれくらいの移動のニーズがあるかを推定するものだ。利用者(乗客)からの配車リクエストやクルマの位置情報などのビッグデータから、機械学習に基づいてはじき出す。2017年末の段階で、15分後の需要を85%の精度で予測できるようになった。

 どの配車リクエストに対してどのクルマを向かわせるかを判断するアルゴリズムにもAIを使う。必要な場所・時間に最適なクルマを用意する。利用者と運転者の満足度を高めるだけでなく、渋滞の解消も手助けできる。

吸い上げたデータの収集・蓄積先は。コネクテッドカーの領域では「Amazon Web Services(AWS)」に代表されるパブリッククラウドを使う企業が急増している。

 AWSのようなパブリッククラウドは使わず、自社で構築したサーバーでデータ処理している。オンプレミス(自社所有)環境の方が安い処理コストを実現できている。滴滴出行は(約5000人の技術者を抱える)クラウドの専門家集団だ。

 当然、収集したデータは厳しく管理し、プライバシーを保護した状態で処理している。データは匿名化(マスキング)し、特定の個人にたどり着けないようにしている。社内でもデータを扱える人の権限をいくつかのレベルに分けて設定している。