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 トヨタ自動車の次期パワー半導体の「主役」が変わる。「プリウス」や「アクア」といったトヨタブランドの電動車両において、インバーターや昇圧コンバーターに用いるパワー半導体素子(以下、パワー素子)が、2020年ごろから、現行のSi(シリコン)製IGBTから低損失なSiCパワー素子に段階的に切り替わると考えられてきた。トヨタは、2014年ごろから「プリウス」や「カムリ」のハイブリッド車(HEV)をベースにした試作車に、SiCパワー素子を搭載して走行試験や公道実験を繰り返すなど、SiCに対する積極的な姿勢を見せていたからだ(図1)。

図1 トヨタ自動車「カムリ」HEVをベースにしたSiCパワー素子搭載の試作車
図1 トヨタ自動車「カムリ」HEVをベースにしたSiCパワー素子搭載の試作車
公道実験に用いた。(写真:トヨタ自動車)
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 ところが今回日経 xTECH/日経エレクトロニクスの調べて、SiCの採用は見送られ、代わりに新型IGBTが搭載されることが分かった。早ければ、2019年のトヨタブランドの電動車両から、この新型IGBTが採用される見込みである。

SiCウエハーが足りない

 SiCパワー素子の2020年の採用が見送られた一因は、同素子を製造するのに必要なSiCウエハー(基板)が、「足りないから」(パワー素子に詳しい複数の技術者/研究者)である。すなわち、現在、あるいは1~2年後のSiC基板の供給量では、「“レクサス”のような高級車が採用する可能性があるが、台数の多い量産車に必要なSiCパワー素子をまかなえない」(同)状況にある。

 中でも、自動車向けで求められる、口径が150mm(6インチ)と大きく、かつ結晶欠陥の存在密度が少ない高品質なSiC基板を提供できる企業は限られ、十分な量を確保するのが難しい状況である。SiCウエハーの品質がSiCパワー素子の性能を大きく左右するだけに、パワー素子メーカーは、高品質なSiCウエハーの獲得に「奔走している」(複数のパワー素子メーカー)のが実情だ。