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 「MaaS(Mobility as a Service)はもうからない」との見方がある中、ソフトバンクが黒字化にめどをつけた。フィリピン・マニラ市で、スマートフォンと連携した電動3輪車を公共交通機関として走らせる約2年間の実証実験を実施(図1)。売り上げが経費を上回った。

図1 3輪EVのMaaSで黒字達成
図1 3輪EVのMaaSで黒字達成
ソフトバンクがフィリピンで実証実験した。スマートフォンを使った運行管理基盤を開発し、効率化した。(写真:ソフトバンク)
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 今後、中核の運行管理基盤をアジアの他の交通事業者に提供することを目指す。MaaS事業で提携したトヨタ自動車と設立するモネテクノロジーズで、新しいサービスを考えるのにも役立ちそうだ。

 アジアの公共交通事業の多くは赤字で、税金で補填する。黒字化で税金の補填をなくせることは、税収の少ないアジア各国にとって福音となる。実験を主導したソフトバンクモビリティサービス事業室室長の田中清生氏は、「ある程度の需要がある場所であれば、黒字にできる見通しが立った。黒字化の難しい地域でも赤字幅を減らせる」と手応えを口にする。

 黒字を達成できたのは、1~2分ごとと頻繁に停留所に車両がやってくる高い利便性と、スマートフォン(スマホ)を使った効率的な運用を両立したからである。

 スマホと連携する運行管理基盤を新しく開発し、「カオスなフィリピンに規律をもたらす」(田中氏)ことで、黒字化にこぎつけた。「規律」によって(1)稼働率(1日に占める車両の走行時間)と(2)搭乗率(乗車定員に対する乗客数の比率)を高める。加えて、(3)乗客1人当たりの平均支払額を上げるサービスを考えた。

EVではどう頑張っても稼働率6割

 マニラ市の観光・文教地区イントラムロスで実験した注1)。地区内の移動需要は高く、実験が成功しやすいと判断した。日中の流入者数が3万~5万人と比較的多い。住民は5000人程度と少ないが、観光施設と学校が多いためである。さらに年間を通じて日中の気温がセ氏30度程度と暑い。実験前は、歩くのを避けて、タクシー代わりの3輪車で地区内を移動する人が多かった。

注1)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がソフトバンクに委託し、実証実験を実施した。フィリピン貿易産業省と同国イントラムロス監督庁と協力。実験期間は、2016年4月から2018年9月までの約2年間。

 ソフトバンクが実験で重んじたのが、1~2分ごとに車両が周回することで使いやすくすること。利便性を高めて利用者数を増やすことが、黒字化への最短距離と考えた。利用者数は2年間で右肩上がりに増え続けて、最終的に1日2000人に達した。

 1周の距離は約2.5kmで、周回にかかる時間は15~20分。ソフトバンクは50台の電動3輪車を用意した。半分の車両を常に充電する必要があり、実稼働数が15~20台になる(図2)。これで1分ごとに同じ場所を車両が通る計算だ。なお利用者はスマホで決済する。

図2 充電に時間がかかる
図2 充電に時間がかかる
EVの場合は充電時間が長く、黒字化で重要な指標となる稼働率を大きく下げてしまう。(写真:ソフトバンク)
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